中国国境の旅
そして中国。
再び海へ、旅の終わり。

	USドルから中国元への両替は銀行で
	町の交通手段はほろ付き三輪車が一般的

　中国の入国審査を終え通りに出ると、人力で走る、見たことのない無数のほろ付き三輪車が待っていた。ベトナムならば、さしずめバイクタクシー。しかし「俺の車に乗れ」との呼び込みを振り切り、私は通りを歩きだした。ほんの1時間ほど前まではベトナムにいたはずなのに、今、目に飛び込む文字はほぼ漢字のみ。国境ゲートの近くではベトナムの商品を売る店が軒を連ねていたが、町中へ進むにつれて、爆竹など中国色の強いものが目立ちはじめる。

　たなびく中国国旗、流れてくる中華料理の油の香り、そして家の壁に貼られた宣伝が書かれた赤紙。確かに違う国へ来たのだと、感じずにはいられない。しかしよく見ると、菅笠をかぶり天秤を担ぐおばさんや路上市場に並ぶ野菜など、ベトナムと同じ光景も多い。町の中に見え隠れする、ベトナムとの違いや同じところを考えながら歩いていると、なんだか全てに興味を惹かれてしまう。

　中国から見たベトナムは一体どんな感じなのだろうと、国境の川沿いを歩いてみる。すると、看板にベトナム語と中国語が書かれた一軒の店が目に入った。軒先の商品を覗くと、店主のおじさんが中国語で話しかけてきた。ここは中国、当然ではあるけれど、なれない中国語に少しびっくり。しかし、ベトナム語で「わからない」と伝えると、彼は即座にベトナム語で話し始めた。

　話によると、彼は元ベトナム人で、中国国籍を取り、ここで商売をしているという。彼以外にも、モンカイで見た中国商人と同様、毎朝中国側に通い商売をするベトナム人もいて、中にはハイフォン出身の人々が集まり、漁業を営むコミュニティーもあるという。私が国境を巡る旅をしていることを伝えると、おじさんは「ここから車で30分ほど行ったところに、海の国境と呼ばれるキム・タン海岸があるから、いってみるといい」と教えてくれた。

　車を降りたその前には、ベトナムで見たチャコーの海と同じ、広々とした浜が続いていた。唯一違う点といえば、海岸に並ぶカラフルなパラソル。

　国境を越え、私は中国へやってきた。確かに言葉も文化も食事も違う。しかし、目の前に広がるベトナムのものと何ら変わることのない海を眺めていると、やはり2つの国は続いているのだと感じてしまう。モンカイにしろ、東興にしろ、そこでは誰もが当たり前に国を行き来し、お互いの人や文化を受け入れて日々の生活を送っていた。

　今、海の国境といわれるこの場所には、ベトナムと中国を隔てる境界など何も見えない。そこにはただ、ベトナムの海と同じように、過去から未来へと永遠に満ち引きを繰り返す、静かな海だけが横たわっていた。

目指すは遥か大陸の向こう | 海を越え国を渡る1
海を越え国を渡る2 | ベトナムに融け合う大陸1 | ベトナムに融け合う大陸2
いざ国境を越え中国へ1 | いざ国境を越え中国へ2
山を抜け国を渡る1 | 山を抜け国を渡る2 | 風と共に国を行く
中国国境の旅トラベルインフォ

スケッチトラベルで行く中国国境の旅
モンカイ2泊3日の旅 -日帰りランソンの旅

(2005年5月13日 金曜日 9:03JST更新）