ヴィジュアル☆ベトナム/お気に入りの視覚のクスリ/MY FAVORITE VISUAL HIT

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©Sue Hajdu

サイゴンには、私が必ず誰かを連れていくか、人に紹介する場所がある。統一会堂だ。   広大で、熱帯植物が生い茂る手入れの行き届いた庭園があり、市街地をよく見晴らせて、何といっても特別。未だ損なわれていない1960年代の美的センスを視覚的に堪能できる、世界でも希少な場所でもある。

visual サイゴンという文脈においても、ここは特別だ。年々街が栄え、することも増えてきている一方で、どんな種類の刺激を求めているにしろ、刺激を得られる場所はそれほど多くない。「視覚のクスリ」としての視覚的な刺激を求める時に行く場所はいくつかあるが、ここが私のお気に入りなのだ。   何年にもわたり、いろんな人たちをこの建物に案内した。自分たちだけでは行く機会さえないだろうベトナム人の子どもたち、年老いた父、海外からのあらゆる訪問客、芸術家、学芸員たち。見事な建物の規模、入り乱れるビジュアル、大統領の寝室や戦争の中枢だった地下施設に足を踏み入れた時の背徳的な気分に、誰もが魅せられる。路上でビールを飲む方が良いとした中年の日本人アーティストを除いて、心を動かされずに建物を出た人はいない。   統一会堂はこんなに充実しているにもかかわらず、未体験のサイゴン長期在住者もいる。これには困惑してしまう。京都に行って、寺院を1つも見ないようなものだ。まだ訪れたことのない読者には、ぜひ行ってもらいたい。特に最近は、どこでも自由に歩き回れるのだから気楽なものだ。かつてのように、片時も案内台本を手放せず、こちらが長く立ち止まるか興味を示すと慌てたり、イラついたりするアオザイの女の子に耳を傾けなくても良いのだから。   設計を手掛けたのは、20世紀ベトナムの偉大な建築家ゴー・ヴィエット・トゥー(Ngo Viet Thu)、完成は1966年。漢字を取り入れた構造的な配置は、建築的にも当時の国家にとっても重要な概念だが、そんなことを知らなくても、視覚的な悦楽が得られる。   建物は、歴史的な驚きや感動が満載だ。直通回線や戦争地図、ヘリポート。赤いベルベッドが敷かれた映画館は豪華な生活の魅力を垣間見せる。1960年代のがっちりとした家具、照明器具、マイクロホン、米国軍の通信機器の数々。レ・ロイ(Le Loi)王の戦いを描いた漆絵など優れた芸術的技巧の実例や、ゴー・ヴィエット・トゥー自身の作品。もちろん、建物のディテールや堂々としたスケールも至る所に溢れており、写真に見て取れるように、その静穏や優雅さ、ミニマリズムにいつも心を打たれる。立派なベトナム建築の、こういったところを私は愛する。力強いのに控えめで、結果として、ただ趣がある。建物を出る時には、いつも畏敬の念とインスピレーションを感ぜずにはいられない。   全てを見て回るには、2時間以上は必要になるだろう。係員の昼寝はかなり長いのでご注意を。カメラもお忘れなく。
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©Sue Hajdu

Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 ウエブサイト:www.suehajdu.com Facebook:Sue.Hajdu.Projects
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