お供え物を奪い合うのは大丈夫? 旧暦7月に隠された風習

お供え物を奪い合うのは大丈夫? 旧暦7月に隠された風習

「奪い合い」から「分かち合い」へ
地獄から戻る幽霊を慰める儀式

「幽霊の月/Tháng Cô Hồn」と呼ばれる旧暦7月。地獄の門が開かれて霊がこの世に戻ってくる時期とされ、各家庭では歩道に祭壇を設け、供養を行う。お供え物の数や種類はそれぞれ異なるが、一般的には小さめの祭壇を設置し、そこにお菓子や果物、線香、小銭などを供える。

 供養が終わるや否や、家主の合図で、参列者による供え物奪い(Giật Cô Hồn)の儀式が始まる。近隣住民、子どもたち、若者、通りすがりの人々が一斉に祭壇へ駆け寄り、供え物を真剣に奪い合うのだ。  

 この儀式は、霊を供養して平穏を祈りつつ、同時に商売繁盛も願う、店主たちにとって欠かせない行事だ。

時代とともに変化する風習
優しく、温かく、功徳を積む

しかし現在、この風習は、見苦しさを嫌うベトナム人の性質に合わせて変化しているという。お供え物を奪い合う代わりに、寄付や直接配分を行う家庭が増えており、風習本来の意味を保ちながら、温かみと人道性を感じさせる光景が見られる。

 多くの文化研究者はこの風習を「死者への思いやりを表し、貧しい人々と富を分け合うことで地域社会を結びつける、美しい風習だ」と評価している。穏やかな慈善の心を第一に考え、物欲や騒擾によって本来の人道的な意味が薄れないように時代とともに姿を変えてきたようだ。
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