New 2025.06.01

コンビニから始められる味覚の旅

ベトナム風ハム・ソーセージ入門 Giò – Chả – Nem

ベトナム風ハム・ソーセージ入門 Giò – Chả – Nem
旧正月(テト/Tết)や結婚式など特別な日に欠かせない伝統食の1つに、ベトナム風ハム「ゾー/Giò」やすり身揚げ「チャー/Chả」、発酵ソーセージや焼きつくね「ネム/Nem」がある。後レ(Lê/黎)朝後期(1533~1789年)は王侯貴族のための献上品であり、今やバインミーや麺料理などの具材としても親しまれ、コンビニやスーパーでも手に入る。呼び名も原料も作り方もバリエーションが豊かなゾー、チャー、ネムを通して、ベトナム食文化の奥深さに触れてみよう。


※記事の情報は2025年4月取材時点のものです ※現地情報により内容が異なる場合があります
撮影/平山耕一 フードスタイリング/鶴原翔三(FUME)
目次

ゾー・チャー・ネム作りの村へ

昔ながらの伝統の技と味

ハノイ近郊には、数百年にわたり、ベトナム風ハム「ゾー/Giò」やすり身揚げ「チャー/Chả」、発酵ソーセージ「ネム/Nem」を造り続けてきた村々がある。そんな村を訪れてみた。

Làng Ước Lễ
ウオックレー村

100年以上の家宝である石臼で肉を叩く。2本の木製杵の重さは各2.5kg

宮廷女官が伝えた500年の味を守る ハノイ中心部から車で約1時間のウオックレー村は、ハムやすり身揚げが特産だ。ハム作り体験やライブコマースも行われているほか、各地で専門店を開き、伝統の味を広める人も多い。

村を象徴する村の門

ウオックレー村の入口には、莫(Mạc)朝時代(1527~1677年)に建てられた古い村門がある。16世紀、宮廷女官として仕えた女性が村に戻り、村の門を築き、人々に「ゾー・チャー/Giò Chả」作りの技術を伝えたとされる。

仕込みをしながら、「ゾーチャーミントア」の親方グエン・ヴィエット・ミン(Nguyễn Viết Minh)さんはこう話す。

「私は5歳の頃から父にゾー・チャー作りを習い、今では55年の経験があります。村民のほとんどが、この仕事に携わっていますね。ハムづくりには500年の歴史がありますから」

村人たちは毎朝3時半と15時の2回、ゾー・チャーを作りにいそしむ。屠畜場から直送される豚肉は、温かい状態で村に届く。「豚肉の鮮度の高さがとても大切なんです」。ミンさんの妻はモモ肉の脂を素早く取り除き、薄切りにする。

「始め!」。ミンさんの号令で、4人の男性が各々の石臼に肉を置き、1本の杵で叩き始める。肉が滑らかになり、石肌にくっつかなくなると、2本の杵を使ってリズムよく練り込んでいく。ミンさんは臼に塩を加えて回り、男たちは杵でしっかりと味をなじませ、魚醤ヌックマム(Nước Mắm)を加えてさらに練り、最後に5mm角に切ったラードを混ぜる。

かつては女性が下ごしらえ、火起こし、掃除を、男性が肉の練りこみから仕上げまでを担ってきた

この練った肉をバナナの葉で包み、30分ほど茹でればベトナム風ハム「ゾー/Giò」に、直径20cmの金属製の丸型で15分ほど蒸し、さらに揚げたものがすり身揚げ「チャー/Chả」になる。

「良質なヌックマムが味の決め手です。魚を塩漬け発酵させた最初の水分、いわゆる『一番搾りのヌックマム/Nước Mắm Cốt (Nhĩ)』を使うことで、深い味わいと香りが引き出されるんです」

1時間半ほどで出来上がった熱々の状態で味わってみた。程よく残った肉の質感と、脂身の存在感がしっかりと感じられ、この上ない美味しさが口に広がる。

「今は、肉を均等に混ぜる工程で機械も導入して生産性を高め、真空パックにして販売。冷蔵庫で10日間もちますよ」

製品は毎日ハノイ市内の市場や店舗へと届けられる。価格は(100g)2万5000VND~

45歳の職人ヴー・ヴァン・リン(Vũ Văn Linh)さんは、熟練の職人たちと共に週3回、ハム作りの無料体験を開催

Information

ゾーチャーゴックイエン/Giò Chả Ngọc Yến

住所:18, Ngo 4, Uoc Le, Thanh Oai Dist., Hanoi
電話:058 824 3333 
Facebook:@cahoi.giocha

※リンさんたちによるハム作りの無料体験は、毎週火・木・土曜に開催。電話またはフェイスブックで申し込みを

ゾーチャーミントア/Giò Chả Minh Thoa

Làng Bùi
ブーイ村

薪火でじっくりと炒る、ティン作りの様子

素朴で深い、北の里のネムナム 細く裂いた豚肉や豚皮に魚醤を加えて発酵させ、香ばしく炒った米粉と和えて丸め、バナナの葉で包んだ料理「ネムナム/Nem Nắm」。ネム作りの村は北部各地に点在しているが、なかでも名が知られているのが、ハノイ中心部から北東へ車で約1時間の場所にあるブーイ村だ。

ハーイさんの家族全員がネムナムづくりに従事。義母が肉をスライスする傍らで、ネムナムの包み方をすっかり覚えた15歳の娘がハーイさんを手伝う

ブーイ村のネムづくりは、19世紀末の祝いの席が始まりだとされている。豚の脂身や皮を細く刻み、発酵させたものをライスペーパーで包んだものが食べられていた。

そのネムに工夫を加えたのが、ゾー・チャー職人だったグエン・カック・ディン(Nguyễn Khắc Đính)さん。炒り米粉を加えて団子状に握り、フサナリイチジクの葉(Lá Sung)で巻いて食べるなどの工夫を重ねた「ネムナム」(=握りネム)は評判を呼び、20世紀初めには村の特産品として定着した。

「ここのネムナムは、肉も皮も細く均一に切られ、発酵の加減が絶妙です。とくに、香り高く炒った米粉『ティン/Thính』にはこだわっています」

15年以上ネムナムづくりを続けてきたグエン・ティ・ハーイ(Nguyễn Thị Hài)さんは、その特長を詳しく教えてくれた。

「機械を導入してから作業効率は10倍になりましたが、味を守るために大量生産はしません。少しずつ丁寧に仕上げるのが基本です」とハーイさん

まず、脂身と皮がついたままの新鮮な豚のモモ肉を100g程度の角切りにし、15分ほど蒸して加熱する。

「この工程が肝心で、加熱しすぎると肉がボソボソになり、生のままだと衛生面で問題が出てしまいます。透明な肉汁がにじむ程度が、ちょうどよい火の通りなんです」

加熱後は肉を厚さ5mmにスライスし、繊維を断ち切るように細く刻む。肉7割、皮2割、脂身1割の比率で混ぜ、程よい塩気の魚醤に20分ほど漬けて寝かせる。

ネムナムの風味を左右するのが、炒り米粉の「ティン」だ。粘り気の少ないうるち米を30〜40℃の弱火で丁寧に炒る。

「1回の焙煎におよそ3時間はかかります。仕上がったティンは、手で触ってさらりとし、軽く吹くだけでふわりと舞い上がるほど細かく挽かれていなければなりません。村内にはティンの専門工房もたくさんありますよ」

ティンを寝かせた肉とよく混ぜ、100〜200gずつ団子状にまとめ、バナナの葉で包む。1日置いて発酵させれば完成だ。

年配者は今も手切りにこだわる。「手で切るほうが、肉の旨みや食感をしっかり残せるんだよ」

現在、ブーイ村には100軒以上のネムナム生産者があり、村の主要産業となっている。1個あたり3万VND〜で販売され、贈答品としても人気が高い。さらに、北部の大衆居酒屋ビアホイ(Bia Hơi)やスーパーマーケットにも流通し、人々の生活に行き渡っている。

フサナリイチジクの葉(Lá Sung)には殺菌効果があるとされ、胃の不調を防ぐ昔ながらの知恵だ

ベトナム農業農村開発省の「一村一品/One Commune One Product(OCOP)」認定を受けた工房が複数ある

ネムブーイアインドゥック
Nem Bùi Anh Đức

住所:Bui Xa, Thuan Thanh Dist., Bac Ninh Province 
電話:097 275 4669

ベトナム風ハム・ソーセージ a la carte

全国各地の自慢の味

地元の市場や専門店からコンビニまで、あらゆる場所で目にする並ぶベトナム風ハム「ゾー/Giò」や、すり身揚げ「チャー/Chả」、腸詰「ゾーイ/Dồi」、発酵ソーセージなどの「ネム/Nem」。祝い事から普段の食卓まで親しまれる、ベトナムおつまみだ。地域ごとに異なる味わいとバリエーションの豊かさを楽しもう。

ベトナム風ハム
【北:Giò ゾー、南:Chả チャー】

ひき肉をさらに練って(Giò)成形し、バナナの葉で包んで茹でたり蒸したりしたものをベトナム北部では「ゾー/Giò」と呼ぶ。中部や南部では、これをさらに揚げた料理もひっくるめて「チャー/Chả」と呼ぶことが多く、ややこしい。

ベトナム風シルクハム
【北:Giò Lụa ゾールア、南:Chả Lụa チャールア】

ベトナムで最も一般的なタイプのすり身ハム。豚ひき肉を叩いてペースト状にし、片栗粉や魚醤ヌックマム(Nước Mắm)などの調味料を加え、バナナの葉で巻いて1時間ほど茹でたもの。「シルク/Lụa」と銘打つだけあり、口当たりがなめらかだ。これを基本形として、食材や製法を変えた別バージョンが多くある。

豚肉&皮のハム
【Chả Da チャーザー】

フエ名物。すりつぶした豚肉に細切りの豚皮と粒胡椒を混ぜ、粘りが出るまですりこぎで練り上げ、バナナの葉で包んで茹でたもの。鮮やかなピンク色と独特の歯ごたえ、肉の旨みと胡椒の香りのバランスが絶妙だ。

豚頭肉のハム
【Giò Thủ ゾートゥー】

北部では炒めハム「ゾーサーオ/Giò Xào」とも呼ばれる、旧正月料理の1つ。豚の耳、鼻、皮、舌などの各部位とキクラゲを炒め、バナナの葉で巻いたり、型で押し固めたりしたもの。ゼラチン質が多く、コリコリとした食感がある。

五色花ハム
【Chả Hoa Ngũ Sắc チャーホアグーサック】

メコンデルタのチャーヴィン(Trà Vinh)省の名物。「五色」の具材を使い、幸福の象徴として結婚式などに登場する。バナナの葉にうす焼き玉子(黄)、豚肉ペースト(白)、ニンジン(赤)、インゲン(緑)、椎茸(茶)を重ね、中央に塩漬けアヒル卵を置いて巻き、50分ほど蒸して作る。

牛肉ハム
【北:Giò Bò ゾーボー、南:Chả Bò チャーボー】

牛肉をチャールアに似た製法で作り、赤っぽい見た目で粒胡椒がきいている。19世紀末のフランス統治時代、フランス人は外来種の牛を乾燥した気候のダナンで飼育し、湿度の高い王都フエへ輸送するため、保存性と運搬性が高いチャーボーが生まれたとされる。

仔牛の蒸しハム
【Giò Bê ゾーベー、Giò Me ゾーメー】

中北部ゲアン(Nghệ An)省の名物。細かく刻んだ仔牛の皮と厚切りのヒレ肉に、ヌックマムなどで下味をつけ、バナナの葉の上に卵の薄焼きを広げて肉を包み、6時間ほど蒸す。薄くスライスして食べ、しっとり柔らかい。

椎茸入り鶏肉ハム
【Giò Gà Nấm ゾーガーナム】

鶏肉とシイタケを使ってチャールアの手順で作るもので、より軽やかでヘルシーに。味わいは鶏の種類に左右され、地鶏なら、ほどよい歯ごたえと濃厚な旨みがある。

馬肉の蒸しハム
【Giò Ngựa ゾーグア】

北部山岳地帯ハーザン(Hà Giang)省の名物で、馬肉と豚脂を練り合わせて作る。トウモロコシなどで育った馬の肉は脂肪が少なく、しっかりとした噛みごたえと濃い旨味がある。牛や豚のゾーほど気軽には手に入らず、価格も(1kg)40万VND~とやや高め。

すり身揚げ
【Chả チャー】

ラード入り豚肉の揚げハム
【北:Chả Mỡ チャーモー、南:Chả Chiên チャーチエン】

ペースト状の豚肉に調味料を加え、賽の目に小さく切った豚の脂身を混ぜて15分ほど茹で、両面がこんがり色づくまで揚げる。チャールアよりもコクがあり、しっとりやわらかな食感で、バインミーの具材にもなる。

シナモン風味の焼き豚ハム
【Chả Quế チャークエー】

シナモンパウダー、塩、砂糖、ヌックマムなどの調味料と、賽の目に切ったラードを混ぜた豚肉ペーストを焼き棒に塗り、炭火でじっくり焼く。焼きながら肉を重ね、仕上げに蜜を塗る。香りと旨味のバランスがよく、つまみにもぴったり。

緑米入り豚肉の揚げ団子
【Chả Cốm チャーコム】

まだ青いもち米を炒って加工したコム(Cốm)を練り込んだ豚肉団子。直径約7cmの円形にし、蒸した後に色づくまで揚げる。コムのもちもち感とジューシーさが魅力で、揚げ豆腐と海老醤のつけ麺「ブンダウマムトム/Bún Đậu Mắm Tôm」のトッピングとして人気。

魚のすり身揚げ
【Chả Cá チャーカー】

北部や内陸部ではナマズやライギョ、沿岸部ではサワラやムロアジの魚でつくる。北部ではヌックマム主体の塩味で、中南部では砂糖も加えた甘めの仕上がりに。かまぼこのような滑らかさはなく、魚の質感がしっかりと感じられる。

卵入り蒸しつくね
【Chả Trứng Hấp チャーチュンハップ】

砕けた米を炊いたホーチミン市名物「コムタム/Cơm Tấm」の定番おかず。豚ひき肉に春雨やキクラゲ、卵を加えて蒸し上げた料理で、ふんわり香ばしく、きくらげの歯ごたえと卵のコクがある。

イカのすり身揚げ
【Chả Mực チャームック】

西洋料理店の料理人ターイ・レー(Tài Lễ)さんが1946年に生み出した。ハロン湾のコウイカ(Mực Mai)を使用し、手でつぶすことでイカの弾力を保つ。1kgあたり50万VNDほど。

蟹のすり身団子
【Chả Cua チャークア】

海のカニの身と豚ひき肉を丸めて茹でたもので、名物「フエ風のブンボー/Bún Bò Huế」に欠かせないトッピングのひとつ。カニの旨みと豚肉のコクが溶け合い、スープに深みを加える。

赤くて甘い中国ソーセージ
【Lạp Xưởng ラップスオン】

中国腸詰「ラプチョン/臘腸」由来で、豚ひき肉とラードを豚の小腸に詰めたもの。主にドライ(Khô)とフレッシュ(Tươi)がある。塩、砂糖、胡椒、五香粉などで味付けし、梅桂露酒(Rượu Mai Quế Lộ)などの酒も加えるため、加熱すると酒の風味が強調される。

フランス料理発祥!? ベトナム北部の腸詰め
【Dồi ゾーイ】

19世紀にフランス人が持ってきた腸詰めなどに影響を受け、ベトナム食材を詰めて仕上げたソーセージ。豚や犬の腸、または動物の筒状の部位を使い、血、香草、塩、コショウ、うま味調味料、ヌックマム、ニンニク、ピーナッツ、緑豆などを詰めて、蒸すか焼いて調理する。

豚の血ソーセージ
【Dồi Heo ゾーイヘオ】

フランスの腸詰「ブーダン/Boudin」に由来。豚の血や脂、刻んだ香草(バジル、コリアンダー、ネギなど)を大腸に詰める。蒸したり焼いたりと調理法は多彩で、北部ではマムトムで食べる。

軟骨ソーセージ
【Dồi Sụn ゾーイスン】

細かく刻んだ豚の軟骨と炒ったピーナッツ入り。外はパリッと香ばしく、軟骨の歯ごたえがアクセントになって飽きがこない。豚の血を使っていないため、子どもも食べられる。

ヤギのソーセージ
【Dồi Dê ゾーイゼー】

ニンビン省(Ninh Bình)の名物。石灰岩山地で放牧されたヤギは肉が引き締まり、脂肪や臭みが少ない。バジルやサクラタデなどの香草と合わせ、炭火で香ばしく焼き上げる。甘辛の味噌ダレで味わう。

田ウナギのソーセージ
【Dồi Lươn ゾーイルオン】

刻んだ身が固く脂身が少ない田ウナギ、豚肉、背脂、青ネギ、ニンニク、レモングラス、ヌックマムなどを、しっかり混ぜ合わせて豚の腸に詰める。唐辛子とレモングラスを加えたヌックマムにつけて食べる。

名前も中身も、一筋縄ではいかない
【Nem ネム】

ベトナム語の「ネム/Nem」は、もともと漢越語の「楠/ネム/Nêm」が由来とされ、「しっかりと握る・巻く・包む」を意味する。このため、肉を細く切って発酵させ、握って葉で包んだ料理、あるいはつくね、春巻きのように具材を巻いた料理もすべて「ネム」と呼び、名称の違いは地域性が高い。

つくね

下味をつけたひき肉に薬味を混ぜ、丸めたり串に刺したりして炭火で焼いたもの。竹串やレモングラスの茎を串に使い、焼いたつくねはレタスやシソなどの香草と一緒にライスペーパーで巻き、特製ダレで味わう。

フエ宮廷料理の豚肉つくね
【Nem Lụi ネムルイ】

中部方言で「ルイ/Lụi」は捏(つく)ねるという意味。豚のひき肉、皮、脂身を塩や胡椒で味付けし、レモングラスの茎につけて炭火で焼く。レタス、パイナップルなどと一緒にライスペーパーで巻き、挽いたもち米、ひき肉、ピーナッツが入ったとろみのあるタレで食べる。

ニャチャン風豚肉つくね
【Nem Nướng Nha Trang ネムヌオンニャチャン】

ニャチャン・ニンホア(Ninh Hòa)の家庭料理で、赤身の多いモモ肉を使う。竹串に肉をつけて炭火で焼き、レタス、若いマンゴー、揚げライスペーパーとともに、ライスペーパーで巻いて食べる。もち米、豚レバーなどを煮込んだ、とろみのある甘い特製ダレが味の決め手。

発酵系

薄切りした肉に炒り米粉やニンニク、唐辛子などを混ぜて発酵させたもので、酒のつまみの定番。使う材料や発酵期間の違いにより、酸味や風味に個性が生まれる。

発酵ソーセージ
【Nem Chua ネムチュア】

豚ひき肉と皮に、ニンニク、唐辛子を混ぜ、成形して2~3日発酵させる。北部はグアバの葉(Lá Ổi)、中部はタイワンモミジ(Đinh Lăng)の葉、南部はアメダマノキ(Trùm Ruột)の葉を加える。とくにタインホア(Thanh Hóa)省産が有名。

中部風発酵ソーセージ
【Tré チェー】

フエやビンデイン(Bình Định)省などの郷土料理。豚の皮や耳の細切りを茹で、炒りごま、ガランガル、レモングラスなどと混ぜ、バナナの葉で包んで3~5時間発酵させる。レモングラスの香り、ピリ辛味で、コリコリとした豚耳の食感がアクセントに。

炒り米粉と豚肉の握りネム
【Nem Nắm ネムナム】

北部名物。ヌックマムで味付けした豚肉と皮を15分ほど蒸して丸1日発酵させ、炒り米粉と混ぜて丸く整え、フサナリイチジクの葉をはさんだバナナの葉で包む。酸味は穏やかで、炒り米粉の香ばしさがある。フサナリイチジクの葉で巻き、チリソースで味わう。

クジャク肉の発酵ソーセージ
【Nem Công ネムコン】

フエの宮廷料理「八珍/Bát Trân」の1つで、クジャクの脚肉を細かく刻み、ガランガルなどの香辛料を加えて3日間発酵させたもの。解毒作用があり、王族の命を守る“食の護符”とされた。現在は、豚肉や海鮮の揚げ春巻きとニンジンなどの野菜でクジャクの姿に見立てたものを指す。
photo:©FB@maquancusine

ー 春巻きの発祥は南部!ー
北部では「ネム」、中部は「ラム」

生春巻き「ゴイクオン/Gỏi Cuốn」[ゴーイ(Gỏi)=サラダ・和え物、クオン(Cuốn)=巻く]も、揚げ春巻き「チャーヨー/Chả Giò」もベトナム南部発祥の料理。揚げ春巻きはサイゴンの華人が考案した“豚ひき肉とキャベツのライスペーパー包み揚げ”が始まりとされる。

20世紀初頭、サイゴンから帰郷したハノイ女性が「ネムザーン/Nem Rán」として広めた。北部では巻物料理を「ネム/Nem」と呼ぶため、生春巻きを「ネムクオン/Nem Cuốn」と言う。一方、中部方言では揚げ春巻きを「ラム/Ram」と言い、生野菜で巻いて食べるため「ラムクオン/Ram Cuốn」と呼ぶ。

生春巻き
【北:Nem Cuốn ネムクオン、中・南:Gỏi Cuốn ゴーイクーン】

揚げ春巻き
【北:Nem Rán ネムザーン、中:Ram Cuốn ラムクオン、南:Chả Giò チャーヨー】

ベトナムハムを食べて、作って!

日本人シェフたちの試食会

あちこちで目にするけれど、なぜか食指が動きづらいベトナム風ハム。そこで和食店の料理長2人に、各種ハムの試食をお願いした。率直な感想を聞いた上で、 家庭で簡単にできるレシピも依頼した。人気店シェフの感想はいかに!?

撮影/平山耕一

「どんのすけ」「かどはち」「寿司どんちゃん」「鮨煉」
植田 真一さん
共同経営者&料理長。東京の老舗料亭で8年間にわたり和食を学び、イタリアでの経験ももつ。2015年に飲食店の立ち上げで来越し、2018年に独立

Facebook: @donnosuke@kadohachivn鮨 煉 SUSHI RENSUSHI DON 寿司 どんちゃん

「フューム/FUME」「カク/Kaku」
鶴原 翔三さん
オーナーシェフ、「スシタイガー」共同経営者。大阪、カナダ、シンガポールなどで修業し、2019年にベトナムで独立。現地の食材を取り入れたモダン和食に力をいれ、各国シェフとのコラボ多数

Facebook:@DineWithFume@kaku.izakaya@sushitiger.saigon
各種ハムを切りながら、開口一番、豚頭肉のハム(Giò Thủ)について、「まるでフレンチみたい! 食感もすごくいいし、このまま前菜でいい」と鶴原シェフ。シナモンハム(Chả Quế)の香りに、「これはワインにも合う」と高評価だ。牛ハム(Chả Bò)は「ビール、ハイボール、何にでも合いますね」とその万能ぶりを実感。シルクハム(Chả Lụa)は「切ってすぐはピンク色ですね。どれも全体的に塩気を抑えているのが、日本と違いますね」と植田料理長は話す。

発酵系のネムチュア(Nem Chua)やチェー(Tré)は、「胃に染みる匂い。ねっとりが独特だし、発酵系が好きな人はハマる味」(鶴原)、「旨味が一番あるのはわかるけど、苦手」(植田)と好みが分かれたものの、プロならではのアレンジ案も出た。

「ハマグリと合わせてボンゴレとか。バジル系の葉をたくさん入れて、細かく刻んだネムチュアを最後に入れて酸味を出すといいかも」(鶴原)、「ほぐしてマヨネーズと和えて、軍艦のお寿司とか」(植田)

どれも美味しいのに、日本人があまり食いつかない点については、「ご飯のおかずにはならない」との指摘があがった。「ベトナムでは、そのまま食べるおつまみですよね。調理するという概念がないみたいです」(植田)。そんな「調理しない」ベトナム風ハムを使った料理を、2人に提案してもらった。

お弁当のおかずに
<ベトナム風ハムカツ>
by 植田料理長

材料:シルクハム(Chả Lụa)、クリームチーズ、大葉、卵、小麦粉、パン粉

①ハムを3~4mmの薄切りにする(4枚)。②ハム→クリームチーズ→大葉の順で重ねる。小麦粉→溶き卵→パン粉の順でつけて、2~3分おく。③170℃の油で3分ほど揚げる。きつね色になったら完成。ケチャップ、マヨネーズ、ウスターソースなどお好みで。

ファミマで買える食材で1品
<焼きうどん>
by 鶴原シェフ

材料:すり身揚げ(Chả Chiên)、カット野菜パック(モヤシ、ニンジン、キャベツ、タマネギ)、生シイタケ、ゆでうどん

うどんを軽く湯がき、ごま油をなじませて、醤油(小1)を混ぜる。②温めたフライパンに少量の油を入れてうどんを焼く。麺はかき混ぜず、しっかり焼き目をつけて皿に盛る。③油でニンニクを炒め、野菜1パックとシイタケを炒めて塩を加える。野菜の半量程度の水と、少量の酒を加え、1~2分ほどゆでる。チキンコンソメ、みりん、しょうゆ、砂糖(各小1)、オイスターソース(大1)、胡椒を加え、とろみが出るまで煮る。餡をうどんにかけて完成。
詳しいレシピ紹介はこちらから!
https://vietnam-sketch.com/20250601119905/

ここで買えば間違いなし!

ベトナム風ハム・ソーセージの人気店

どこでも手に入るベトナム風のハム・ソーセージは、日々のおつまみや食卓の“あと1品”にとっても便利。せっかくなら専門店の味も試して、好みの味を見つけてみよう。
Hanoi ハノイ

「シルクハム/Giò Lụa」(1kg)28万VND、「シナモン風味の焼き豚ハム/Chả Quế」(1kg)28万VND

バインミーチャーノンズンハイン
Bánh Mỳ Chả Nóng Dũng Hạnh
1990年代初頭に小さな屋台としてスタート。現在はハノイ市内に複数の支店を展開し、宅配も可。自家製ソーセージを具材にした「温かいソーセージのバインミー/Bánh Mỳ Chả Nóng」(3万5000VND)も人気だ。

Information

住所:20 Le Dai Hanh St., Hai Ba Trung Dist., Hanoi
電話:098 786 2042
営業時間:5:00~21:00
休日:なし
Facebook: @cosochinh20LeDaiHanh

ウオックレー村出身の店主が路上屋台から始めた店。名物は「ラード入り豚肉の焼きハム/Chả Mỡ Nướng」。行列ができる人気店だが宅配は行わず、目の前で丁寧に切って出す昔ながらのスタイルを貫いている。

ゾーチャーフオンス
Giò Chả Hường Sự
ウオックレー村出身の店主が路上屋台から始めた店。名物は「ラード入り豚肉の焼きハム/Chả Mỡ Nướng」。行列ができる人気店だが宅配は行わず、目の前で丁寧に切って出す昔ながらのスタイルを貫いている。

Information

住所:14 Hang Vai St., Hoan Kiem Dist., Hanoi
電話:096 942 2674
営業時間:7:00~13:30 / 16:00~売り切れるまで
休日:なし
Ha Long Bay ハロン湾

「イカのすり身揚げ/Chả Mực」(1kg)43万VND、「高級イカのすり身揚げ/Chả Mực Thượng Hạng」(1kg)65万VND

チャームックトアン
Chả Mực Thoan
2017年「ベトナム農業ゴールデンブランド150選」に選出された、ハロン湾名物「いかのすり身揚げ」専門店。新鮮なコウイカを手作業で丁寧に練り上げる製法で、香ばしさと弾力がある。全国発送可。

Information

住所:36-37, Cho Ha Long 1, Ha Long, Quang Ninh Province
電話:(0203) 362 7219
営業時間:6:00~18:00
休日:なし
Facebook: @thoanchamuc
ウェブサイト: chamuchalong.com

Thanh Hoa

「ネムチュア/Nem Chua」(10個)5万~10万VND

ネムチュアホアトン
Nem Chua Hoa Thông
タインホア産ネムチュアの専門店。すべて手作業で、代々受け継がれてきた製法に従って作られている。衛生的な真空パックで包装されるため、ネム本来の鮮度と風味がしっかり保たれる。ハノイに支店あり。

Information

住所:73D Dao Duy Tu St., Ba Dinh Ward, Thanh Hoa, Thanh Hoa Province
電話:094 765 1111
営業時間:7:30〜19:30
休日:不定
Facebook: @NemChuaHoaThongThanhHoaHaNoi
Hue フエ

「ネム/Nem」(20個)7万VND、「チェー/Tré」(500g)10万VND

バーゴンネムチャーチェーフエ
Bà Ngôn Nem Chả Tré Huế
1989年創業で、昔ながらのやり方で手作りされる各種伝統ハムは、バナナの葉で包んで炭火で茹でる伝統製法を守っている。細切り豚耳と香辛料を和えた発酵ソーセージ「チェー」は、全国発送にも対応。

Information

住所:222 Nguyen Sinh Cung St., Vy Da Ward, Hue
電話:093 586 5522
営業時間:7:00〜20:30
休日:不定
Facebook: @nemchatre.bangon222

「ネムルイ/Nem Lụi」(10本)16万VND

クアンハン
Quán Hạnh
つくね「ネムルイ」が人気のフエ料理専門店。仕込みや成形はすべて店内で行われ、タイミングが合えば作業風景を目にすることも。注文状況に応じてその日の製造量が決まるため、売り切れ次第終了となる。

Information

住所: 11-15 Pho Duc Chinh St., Phu Hoi Ward, Hue 
電話:035 830 6650
営業時間:10:00~21:00
休日:不定
Facebook: @banhkhoaihanh111315pdc
Da Nang ダナン

「チャーボー/Chả Bò」(100g)3万2000VND、(1kg)32万VND、「ネム/Nem」(20個)7万VND、「チェー/Tré」(1kg)26万VND

チャーボーロック
Chả Bò Lộc
牛肉100%のソーセージの専門店。保存料を使用せず、自然な赤みを帯びた色合い、しっかりとした味わい、そして弾力ある食感が特長で、食品衛生面にも配慮。ウェブ販売にも対応している。

Information

住所: 4A Tran Binh Trong St., Hai Chau Dist., Da Nang
電話:090 538 5585
営業時間:5:00〜21:00
休日:不定
Facebook: @Chalocdn

「チャーボー/Chả Bò」(500g)15万VND、 「チェ―/Tré」(10本)10万VND

チャーボーミーリンダナン
Chả Bò Mỹ Linh Đà Nẵng
35年以上前に祖父が始め、今は娘夫婦が営む3世代目のチャーボーの専門店。毎朝手作りするチャーボーは、1日20~30kgを仕込み、0.5kgと1kgサイズで販売。「チャールア」や発酵豚肉ソーセージ「チェ―」もある。

Information

住所:56 Trieu Nu Vuong St., Hai Chau Dist., Da Nang
電話:091 406 3138
営業時間: 6:00~19:00
休日:不定
Facebook: @mylinhdanang
Nha Trang ニャチャン

「ネムヌオンセット/Nem Phần」(1人前)5万VND、「ネムチュア/Nem Chua」(1kg)17万VND

ネムヌオンコーバイー
Nem Nướng Cô Bảy
ポーナガール塔近くにある、地元の人がおすすめする小さな店。つくね「ネムヌオン」は、脂っこさを抑えつつ肉の旨味がしっかりと感じられ、とろみのあるタレはほどよい甘さで絶妙な味わいで根強い人気を誇る。

Information

住所:86 Thap Ba St., Vinh Tho Ward, Nha Trang
電話:076 432 7396
営業時間:8:30~21:00
休日:不定
Facebook: Nem Nướng Cô Bảy - 73A Tháp Bà
Ho Chi Minh City ホーチミン市

「シルクハム/Chả Lụa」(1kg)30万VND

チャールアバーフイン
Chả Lụa Bà Huynh
バインミーの有名店「フインホア/Huỳnh Hoa」創業者の店。自然由来の原材料のみを使って独自レシピで毎日作り立てを販売するハム・ソーセージは、いずれも食品安全証明書を取得。宅配にも対応。

Information

住所:185K Cong Quynh St., Dist. 1, HCMC
電話:1900 0322
営業時間:5:30~23:00
休日:なし
Facebook: @banhmibahuynhh
ウェブサイト: banhmibahuynh.vn
※ほか市内に1店舗

「ディル入り牛肉ハム/Chả Bò Thì Là Chiên」(500g)19万5000VND、「豚頭肉のハム/Giò Thủ Xào」(500g)16万5000VND

ヨーチャーミンフオン
Giò Chả Minh Hương
20年以上の経験を持つ職人が在籍し、三世代にわたり培われた技法を駆使して国内各地の厳選素材を使ったベトナム風ハム・ソーセージを製造する食品メーカー。ドイツ製の設備を導入して品質向上にも努める。

Information

住所:249/20 Ngo Quyen St., Ward 6, Dist. 10, HCMC
電話:090 339 5221
営業時間:9:00~17:00
休日:不定
Facebook: @giochangontphcm
ウェブサイト: giochaminhhuong.com
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