ヴィジュアル☆ベトナム/アーティストイニシアティヴの歴史と活動 / THE HISTORY AND ACTIVITIES OF ARTISTS’ INITIATIVES

visual_image1展示&パフォーマンス。サイゴン川の船上で開催された一夜イベント。テア・バウマン(Thea Baumann)主催 前号で紹介した「アーティストイニシアティヴ」は、活動的で刺激的なベトナム芸術システムの3本目の柱。アーティストイニシアティヴは一般的に少人数のアーティストが運営する。ベトナムでも芸術への援助が限られるため、草の根レベルでの活動が多い。利益より芸術システムの要素を作りと支援を最大の目的とし、その非営利スタンスは強固な思想に基づいている場合が多い。

visual予算の少なさは、情熱で補われる。芸術システムの一部として積極的に機会を求め、新しい活動の場を創る。アーティストイニシアティヴの登場によって、芸術システムの従来の権力構造はかき乱される。アーティストが枠組みの中で受け身とならず、より力を持つためだ。   アーティストイニシアティヴは、無難で保守的なベトナムの制度的・商業的な芸術作品と対照的に、実験的な作品を支援し、新しいアイデアを出す自由な場となる。また若手アーティストに焦点を合わせ、展示、ビデオ、パフォーマンスアート、ライヴアート、コミュニケーションアート、コミュニティーアートなど、絵画や彫刻を越えた幅広い媒体や表現に重点的に取り組む傾向がある。   ベトナム初のイニシアティヴ、ハノイの「サロンナターシャ/Salon Natasha」は、1990年代に数多くの著名アーティストの活動開始に貢献した。2000年代には「リレガ/ryllega」 がハノイで最も有名なアーティスト運営の場となった。最近では「ドックラブ/Doc Lab」が動画講座と非主流派のビデオ・映画作品を通して影響を与え、2013年に登場した「マンジ/Manzi」はカフェ&アートが混在した空間だ。   ホーチミン市初のアーティストイニシアティヴは2005年に登場した。「リトルブラブラ/little blah blah(albb)」は特定の場を定めない「ローミング」と呼ばれる形式で、市内の各所でトーク、読書室、展示会などの活動を行った。数年後に登場した「サンアート/San Art」は、より伝統的なギャラリーでプログラムの活動と拡散を行う。また「ゼロステーション/Zero Station」は地元コミュニティーや海外と連携。「フューチャーショーツベトナム/Future Shorts Vietnam」は“ローミング式”で各国の映画を毎月上映している。   アーティストイニシアティヴはふいに現れ、3〜5年ほど続き、財政難やマネジメントの乏しさなど、各種の圧力や問題で息切れしてしまうことが多い。その気まぐれな性質から、場所から場所へと移動し、一夜限りの“奇襲”イベントを開催するなど、活動を追うのが難しいこともある。   そこで、「ハノイグレイプヴァイン」を購読し、オープニングに顔を出してあれこれ質問してほしい。注意して耳を傾ければ、おそらく宣伝はされないイベント情報が入り、ベトナム芸術シーンの最先端を把握していることを誇りに思えるだろう。
visual_image2ビル・グエン(Bill Nguyen)のコミュニケーションアート作品。サイゴンのカフェで開催された12週間のオープンスタジオの一部。albb主催
Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 ウエブサイト:www.suehajdu.com Facebook:Sue.Hajdu.Projects Hanoi Grapevine: http://hanoigrapevine.com
関連記事
Related Articles
水たばこ「トゥオックラーオ」は 北部数百年の大人のたしなみ?
2022.10.16

水たばこ「トゥオックラーオ」は 北部数百年の大人のたしなみ?

サーンチャイ族<br> Người Sán Chay
2022.04.15

サーンチャイ族
Người Sán Chay

ベトナムの通り名と番地 実はそこにルールがあった!
2022.03.16

ベトナムの通り名と番地 実はそこにルールがあった!

越祭モノガタリ/(20)毎年賑わう凧揚げ大会で 国民の英雄へ敬意を表す
2020.11.15

越祭モノガタリ/(20)毎年賑わう凧揚げ大会で 国民の英雄へ敬意を表す

越祭モノガタリ/(19)平和と幸福をもたらす 俊才な布蓋大王の物語
2020.10.15

越祭モノガタリ/(19)平和と幸福をもたらす 俊才な布蓋大王の物語