メディカルトーク/第93回やはりベトナムで多い /寄生虫病

メディカルトーク症例

45歳の男性が、数日続く下痢や嘔吐を訴え来院。検査の結果「肝蛭(かんてつ)症」、「ブスキ肥大吸虫症」と診断された。初期段階であったため、処方された薬で、快気することができた。

今回のドクター

ズオン・ティ・トゥイー(Duong Thi Thuy)医師/ホンゴック(Hong Ngoc)病院
①肝蛭症とは 肝臓や肝管に寄生する肝蛭(かんてつ)という寄生虫による感染症の一種です。人にも家畜にも感染し、おもに水生植物や豚などから感染します。   血便にはなりませんが、食べた物が消化されないで排泄される状態の下痢が、数日から数週間続きます。   嘔吐、発熱、黄疸なども伴う場合が多く、重度の場合や、早期治療が遅れてしまうと、小腸が膨張し、腸閉塞を誘発します。最悪の場合、心臓や肺にまで支障をきたし、死に至ることもあります。 ②日々の生活に潜む感染経路 感染した人または家畜の小腸内の寄生虫の卵が、便と共に体外に排出され、水中で巻貝に寄生し、幼虫へとふ化します。   その後、ヒシやシダ植物、蓮根などの水生植物の葉や茎に付着したものを人や豚が食すことにより、体内に侵入していきます。   体内に入った幼虫は、十二指腸で莢膜を破って、小腸に寄生し、約3ヶ月で2~3㎝にまで成長します。 ③検査方法と初期治療 内視鏡などは使わず容易に検査できます。胃痛、下痢、むくみ、虚弱などの臨床症状が確認できれば、血液検査と検便を行います。血液検査では、主に白血球数の異常が起きていないかをみます。   現在は、プラジカンテルという特効薬で簡単に治療ができます。2歳児から服用でき、体重1kgに対して40 mgを処方します。 ④簡単にできる予防法 火の通っていない水生植物を食べないことです。ベトナムでは、家畜の糞を肥料として使用している場合が多いので、生の野菜を食すときは、流動水でよく表面を洗い流しましょう。普段から、地域内で互いに病原菌を広げないよう、気に掛けることも大切です。
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