ヴィジュアル☆ベトナム/WHY DO HOTELS BUY SUCH BAD ART?/なぜホテルはくだらない絵を買うのか

なぜホテルはくだらない絵を買うのか ヴィジュアル☆ベトナム数ヶ月前、ある小さな町の一番のホテルでランチをとった。友人と私は個室に座り、素晴らしいサービスを満喫していたが、壁の絵を楽しむことは到底できなかった。その絵があまりにもひどくて、まだお昼時なのにもかかわらず吐き気をもよおしたほどだ。 「くだらない」とは、絵画の技術のことではない。アーティストが選んだ主題や知的なアプロ―チがあまりにとんでもないために、知的にも心情的にも侮辱された気分になったということだ。 あのホテルは、昼下がりに従兄弟に言いつけて地元のフレーム屋で30ドルの絵画を買いに走らせるような家族経営のホテルではない。財政的にも人材的にも規模の大きいチェーンホテルで、もっとうまくやれるはずなのだ。ベトナム国内の銀行や企業も同じだ。なぜ企業は、くだらない絵を買ってしまうのだろうか。 ベトナムにはかなり大勢の現代アーティストがいる。その作品を購入することで、彼らは財政的に潤うだけでなく、企業内で飾られたり公の場で人の目に止まったりすることで知名度も上がる。言うまでもなく、現代美術を支援することは社会の文化的・知的な発展を促す強力なツールだというのに、くだらない絵画を買えば二流のアイデアがまかり通ってしまうではないか。芸術は結果的に目とこころを刺激する。銀行で順番待ちをする間、半ば強制的に見なくてはいけない代物よりも、よほど良いものなのだ。 確かに、美術畑にいる人でなければ、現代美術は理解しづらいものだけれど、優れた案内人たる"ギャラリスト"はベトナムにも何人かいる。これについては次号で話すとして、まずは簡単なルールをお伝えして終わりにしよう。「どれだけ高値が付けられていても、水牛、アオザイ、ゆがんだ屋根のハノイの街並、ライムグリーン、明るいオレンジ、赤色が使われている絵が見えたらそのギャラリーに入ってはいけない」。そこで現代美術を目にすることはなく、私と同じなら、気分が悪くなってしまうだろうから。
Sue Hajdu スー・ハイドゥー オーストラリア人アーティスト、写真家、文筆家としてベトナムと日本で活動。シドニー大学・日本学の学士号、同大学院視覚芸術の修士号をもつ。 www.suehajdu.com facebook: Sue.Hajdu.Projects
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