時を忘れ、水と共に巡る旅。
ごく普通の農家訪問。
他では決して味わえない本当の素朴さ。
早朝のチャーオン。荷を積んだ船は、夜が明けるずっと前に集まり作業を始める。気温が高くなる昼までにひと仕事終えるためだ。
2日目‐5:30‐@厨房
朝食のパンは自家製なのよ、と昨日アンさんが言っていた。早起きして地階をのぞくと、厨房には黙々と作業する女性がひとり。仕事に就くのはここが初めてと言いながらも、慣れた手つきでパンを焼く様子を眺めていると、他のスタッフが起きてきた。
そろそろ窓の外も明るくなったようだ。サンデッキに上がると、遠く前方に無数の船が集まっているのが見える。そう、ここチャーオンもまた、川の物流の中継地点なのだ。分厚い上着を着て少し寒そうな様子の船長が操舵席に着くと、バサック号はゆっくりと進み出した。
早朝の風は強めでひんやり。果物や野菜を山ほど積んだ船の群れのすぐそばを通過する。小舟に積み替えられた荷物はここからあちこちへと運ばれて、最後にはどこかの町の市場に並ぶのだろう。船から高々と伸びている竿を指差して「あれにくくり付けられているものが、その船で売っているもの。野菜が多いね」と船長が教えてくれる。
子供たちはもの珍しそうにじっとこちらを見つめるが、大人はみんな荷の積み下ろしに忙しい。空はカラリと晴れ上がり、川面は朝日を照り返してキラキラと光る。見るもの感じるものすべてに素直な感動がある。こんなに上機嫌なメコンの旅は初めてだ。
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