ドンホー村 春を呼ぶ、幸せの版画。 たった二軒の家が守る、ベトナムの心。
ハノイ市内より40キロ、車で約1時間。舗装道路を外れ、砂埃立つ堤防をトコトコ走り、ようやくドンホー村にたどり着く。農村の生活や四季の風物、民話などをモチーフとした、多版多色のドンホー版画を製作している村がここだ。
ドンホー版画は、元々お正月を彩る版画として用いられてきた。貧しかったベトナム人家族が、せめてお正月だけでも華やかに彩りたいという思いから生まれたと言われている。そのためか、描かれる絵は風刺画もあるが、庶民の願いを題材とした、4〜5色刷りの華やかなものが多い。かつては村全体で製作されていたこのドンホー版画。しかし、度重なる戦争の影響から、今ではこの版画を製作し生計を立てる家は、2軒のみという。
その内の一人、Nguyen Huu Sam(グエン・ヒュウ・サム)さんは、かろうじて残された伝統文化を、後世に伝えようと今でも奮闘している。作業自体は息子であるQua(クワ)さんが第一線で行っているが、版画にかける情熱はいまだ健在。工房に山積みされている木板も、彼が必死で戦火の中、守ってきたものだという。そんなサムさんの努力が実ってか、ドンホー版画は世界各国のメディアに取り上げられ、すっかり有名になった。そして今、それを息子のクワさんが、見事に引き継いでいる。
「いろんな夢が沢山あるけど、今は何も考えず目の前にあることをこなすだけ」と謙虚に話すクワさん。「伝統を守ることの大変さはある。ただ、好きなだけではだめだし、とにかく勉強も必要だ」。父の姿を見て育った彼はそんな少し照れくさい言葉すら、素直に話す。
ベトナム人がこよなく愛する、幸せの画、ドンホー版画。そこには伝統を必死で守ろうとする親子の想いが、1枚の紙の中に詰まっているのだ。
紙だけでなく、使うインクも果物や石、樹木から作られた、天然素材のみを使うこだわりよう。サムさんから引き継いだ伝統を胸に、今日も紙に向かうクワさん。これからのドンホー版画の期待の星だ
クワさんの工房 住所:Dong Ho, Bac Ninh 電話:(0241) 873847 営業時間:7:30〜17:00 サムさんの工房 住所:Dong Ho, Bac Ninh 電話:(0241) 865482
ドンホー版画の和紙は、実は特別製 〜伝統工芸村を訪ねて〜
Bac Ninh(バク・ニン)省のDong Cao(ドン・カオ)村に、ドンホー村のチェーさん、サムさんのためだけに、和紙を作りつづける工房がある。この工房は100年以上前から紙一筋。しかし、現在紙をすく職人はNguyen Thi Hue(グエン・ティ・フエ)さんたった一人という。彼女は朝の7時から夕方5時まで、約1500枚の和紙を毎日すき続けている。すく作業はとにかく難しく、うまく紙がすけるまでに最低2年かかるという、まさに匠の技。
ドンホー版画用の紙は、色の乗りを良くするために、砕いた貝殻と、もち米で作る糊を混ぜ、表面に塗っている。それにより、普通の和紙では得られない、独特の光沢を持っているのだ。
寺前の出店に版画が並ぶブッタップ寺 〜伝統工芸村を訪ねて〜
ドンホー村から約7キロ。But Thap(ブッ・タップ)寺の愛称で親しまれる、Ninh Phuc(ニン・フック)仏教寺院の前では、版画の出店がならんでいる。石造りの五重塔がそびえ建つこのお寺は、ベトナム最初の仏教の中心地で、2000年前からあるといわれている。田畑に囲まれたのどかなこの寺院。ドンホーまでせっかく足を伸ばしたら、買い物ついでに訪れたい。
住所 But Thap, Thuan Thanh, Bac Ninh 時間 6:00〜19:00 入場料 1万5000ドン(約105円)
もう一人のドンホー版画師 〜伝統工芸村を訪ねて〜
サムさんと共に、ドンホー版画を守り続けているのが、Nguyen Dang Che(グエン・ダン・チェー)さん。500年の長きに渡り代々ドンホー版画を作る家庭に生まれ、彼はその20代目。ドンホー版画の木版の多くは、仏領時代に海外へ流出してしまったが、彼はそうした木版を買い集め、現在約100種類のデザインを所有しているという。今では彼の版画は海外からの受注も多く、その芸術性の高さはユネスコも認めているほど。そんなチェーさんのお店はハノイにもあり、そこで彼の作品を購入することができる。
チェーさんの工房(ドンホー店) 住所 38 Dong Ho, Bac Ninh 電話 (0241) 865308 営業 8:00〜18:00 ハノイ店 住所 17 Chan Cam St., Hanoi 電話 (04) 9287046 営業 8:00〜11:30/14:00〜17:50
パソコン・クーラー・飛行機。 なんでもありのお供え物!? 〜伝統工芸村を訪ねて〜
旧暦の3月15日(新暦4月23日)に催される村祭りでは、現在ドンホー版画に変わり、村の主製品となっているHang Ma(ハン・マ)が供えられる。ハン・マとは、亡くなった人があの世で苦労しないようにとの願いを込め作られた紙の模型で、火で燃やしあの世へ送る。その形は、お金をはじめ、パソコン、クーラー、車や飛行機まで、なんでもあり。
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(2004年12月6日 15:06更新)
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