最終章 この味は日本にも届いている
フンタン社のホーチミン事務所は、目立たない通りにひっそりと建っていた。約束の時刻に、トイさんの息子さん・ヤンさんを訪ねると、大歓迎で迎えてくれた。ヤンさんは、ここでフーコック島の工場から届いたヌックマムの販売を手がけている。言わばホーチミン市事業所長さんだ。
「ウチの製品の30%は日本を含む国外への輸出、50%は小売ヌックマムメーカーに卸し、フンタン社で瓶詰めまでして売っているのは20%だけ。しかも、これも卸売りが中心で、普通のスーパーなどにはほとんど置かないのです。」とヤンさん。だから、スーパーなどを回っても、フンタンブランドのヌックマムは見つからなかったわけだ。
「はい、これがおやじから届いたヌックマムです。」と、ヤンさんが、新聞紙に包まれた1本の瓶を持って来てくれた。お金を払おうとすると、「いやいや、お金は良いですよ。あなたにプレゼントしてやってくれと、オヤジからも言われていますし。」
そう固持され、ありがたく頂いて帰ることにした。
家に戻ると、靴を脱ぐのももどかしく、ヤンさんからもらったヌックマムの包装紙をはぐ。ラベルこそついていないが、販売用の製品と同じように、きちんと瓶詰めされている。その封を切る瞬間、フーコック島の潮風がふっと吹いてきた気がした。
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