第7章 70年間ヌックマムを抱き続ける樽たち
「次に見せるところがあるから、ついて来なさい。」ヌックマムの香りに浸っている私を促すように、トイさんがすたすたと歩き出した。再び車に揺られて、数分、やって来たところは、ヌックマムをつける樽の工場だった。
「樽も良いヌックマムを作るための重要な要素。ヌックマムは一度、樽の中に入れると、1年間ずっと入っているわけだからね。1つ樽を作ると、大体70年くらいは使い続けるんだよ。」直径2メートル、高さ3メートルの樽が、80個並べられるという大きな工場の中では、青年達が作業の真っ最中だった。
「樽は全部手作り。釘などの金属は一切使わない。板と板をつなぐのは木のビス。板の隙間からヌックマムがもれないように、緩衝材として木の皮を挟む。そして最後に、これも木の蔓でできた縄で締めるんだ。」
1個の樽を作るのに3ヶ月かかる。ファンティエットなどでは、陶器のカメを使うが「木の樽のほうが、良い味が出るんだよ」とのこと。「昔は5トン樽だったんだがね、徐々に大きくなり、ワシの代になってからは10トン樽を使っている。ここで、作っているのは12トン入りの樽なんだ。」樽の大型化が進んだのは、高まるヌックマムの需要に応えて、生産量を上げるためだそうだ。
第8章 買うことはできるが
樽の工場から、フンタン社のヌックマムを販売する直販店に戻って来ると、出荷用に瓶詰めされた製品が店頭に並んでいた。 「トイさん、あの一番絞りのヌックマムを買って帰りたいんですけど、1本、売ってもらえませんか。」 「そうか、買いたいのか…。」 いつもは歯切れのいいトイさんが珍しく口ごもる。 「売ってあげるのはいいんだが、君が持って帰ることはできないんだ。」 「どうしてですか。」 「実は以前、飛行機の中でヌックマムのビンが割れて、えらいことになったんだ。それ以来、機内持込が禁止されているんだよ。」 それはそうだろう。飛行機の中は密室。その中にヌックマムが溢れたら…。 「でも、ウチの会社は、毎週3回、ヌックマムを船でホーチミン市に運送している。そこに送ってあげるから、ぜひ訪ねてみなさい。私の息子が働いているから、連絡を入れておいてあげよう。」 そういって、トイさんは一枚の名刺を渡してくれた。
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フーコック島への旅(SketchTravel)
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