<ベトナム芸能界珍道中>
愉快・痛快・ウキウキ★SAKAI
第10話:バンド崩壊!? そして新たなる出発
俺は悩んだ挙句、同じベトナムという武器があるWADAと組んで続けることを選んだ。本当はWADAなんて大嫌いだが、自分が売れるには丁度いい相方だ。孫悟空とピッコロが組めば、サイヤ人にだって勝てる。そんな感覚だ。
それから俺たちは「SAKAI&WADA」として数々のイベントに出演し、歌って踊りまくった。2人で音楽活動をしながらも、俺は自分自身の売り込みも続けていた。そんな俺に電話が入った。
「日本にアジア各国の歌手を集めコンサートを行うので、ベトナムからも歌手を呼んで欲しい」
俺は師匠ゴック・ソンを日本に呼びたいと昔から思っていた。『マネーの虎』でもそう言った。何度もケンカしたが、ゴック・ソンは、やっぱり俺達の大事な師匠だ。
すぐに通訳を介しゴック・ソンと連絡を取り、招聘の手続きを行った。依頼を受けたのが8月で、コンサートは10月。たった2ヶ月で準備をしなければならない。
ゴック・ソンの客だけでライブ会場を一杯にしたいと考えた俺は、面倒くさそうなWADAを誘い、ベトナム人がたくさん住む団地を回り、居ないところには郵便受けに手作りのチラシやパンフレットを投函しながらチケットを売り裁いた。
すると、どこから聞いたのかしらないが、地方からも注文が入り完売状態。師匠の知名度はスゴイんだなと改めて感じさせられた。
そしていよいよゴック・ソンが日本に明日やってくる、そんな時だった。母から俺の祖父が危篤だという電話が入った。俺は迷った。田舎である気仙沼に戻れば、今回の企画は全てパーになる。そんな俺を見てWADAが言った。
「車に乗れよ、今から帰るぞ」
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(2008年3月号 | 2008年3月24日 月曜日 11:10 JST更新) |