＜ベトナム芸能界珍道中＞
愉快・痛快・ウキウキ★SAKAI
第9話：ベトナム凱旋！またもや天狗まっしぐら…。

　相変わらずの豪邸だ。どうやらまだ人気はあるみたいだ。そう思うと俺は、何故か安心してしまった。

　応接間に通され、スポンサー達はベトナムの大豪邸に浮き足立っている。

　メイドがざわつき、一斉に一列に並ぶ。その間からマッチョゴリラ、いやゴック・ソンが颯爽と現われた。

「オー！SAKAI！！ゲンキデスカ〜？」

　アレ？意外な反応に俺はビックリした。扇風機を蹴り壊し、強制帰国させられた俺への驚くほど陽気な対応。

「こいつ大人になったな」

と俺は偉そうにも思いながら、扇風機を壊したことを謝った。

ところが

「ダイジョウブ、ダイジョウブ、キミニアウ、ウレシイ」

と言われ、不本意ながらちょっぴり感動してしまう俺。

　さらにはスポンサー達が俺の日本での活躍を新聞や雑誌を用い、大げさに話してくれたお陰でゴック・ソンはかなりご機嫌。話も弾み皆で酒を酌み交わすことになった。

　メイドがビールやら洋酒やら、あらゆる酒をテーブルに並べる。時計は25時をまわり、豪邸の主もコンサートの終了後だからか、いつも以上にテンションが上がってきた。そして案の定、カラオケ大会がはじまった。

　スポンサーは酔いつぶれそうなのに、必死でベトナムの歌を歌い、ご機嫌をとっている。事前に練習してきたのだろう。さすがジャパニーズビジネスマン。

「SAKAI、ウタウ、ハヤク、ワカッタ〜？ハァン〜」

ゴック・ソンのテンションが上がる。

俺がカラオケを歌ったら、

「SAKAI、キミ、トテモヘタ〜」

ここは我慢、我慢。

「SAKAI、ヤッパリキミ、ダメ〜」

　カラオケを歌ったことで何かを思い出したのだろうか、ゴック・ソンは歌を止め、スポンサーを交えてのお話がはじまった。

　ベトナムの大スターが真剣な顔で、日本から来た怪しげなスポンサー達に話し始める。
俺がベトナムで歌手活動をしたいなら、もう1度弟子として受け入れ、一緒にコンサートをまわってもいい…、みたいな事を言っている。

「もう一度」という単語にスポンサー達は引っかかっていたようだが、アルコールのお陰か受け流したようだ。

俺は満面の作り笑顔で

「日本とベトナム、両国で活躍するスターになりたいです」

と答えた。

　ゴック・ソン、スポンサー、そして俺は熱い握手を交わし、またゴック・ソンの弟子として再出発。俺にまた師匠と呼べる人が出来た。

　破門話はうやむやになったし、誰にも怒られなかったし、ベトナムでも芸能活動出来ることになったし、俺はウハウハだった。

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（2008年1月号 | 2008年1月9日 水曜日 10:43 JST更新）