旧暦7月、ベトナムの「お盆」のお供え物を学ぶ

旧暦7月、ベトナムの「お盆」のお供え物を学ぶ

旧暦7月、ベトナムの「お盆」のお供え物を学ぶ
ベトナムでは旧暦7月15日(2024年は8月18日)がお盆(Le Vu Lan/盂蘭)にあたり、先祖や両親に感謝する日だ。旧暦7月2日~15日に罪が赦された亡霊が現世に戻るとされている。日本とも相通じる行事を知り、さまざまなお供え物の意味を学んでみよう。

お盆の由来を追慕する精進料理の祭壇

仏壇のお供え物
Mam Cung Phat

仏教徒の家庭では、菜食の食事、果物、花が用意される。一般的に果物を供えるだけでも十分。大切なのは仏に向けた真心だ(画像提供/Chau Hoai Anh)

お盆の風習は、仏教の『盂蘭盆経』の説話が始まりとされる。釈迦の弟子の目連尊者は、亡くなった母親が餓鬼道で苦しむのを見て釈迦に助けを求め、旧暦7月15日にお供え物をささげて供養するように教えられ、母親は極楽往生を遂げた。以降、この日に先祖への感謝を表すためお供え物をささげる習慣が各地に広がっていったという。

ベトナムでは精進揚げ春巻き(Nem Chay)やキノコのスープ(Canh Nam)などの精進料理のほか、幸運を象徴する赤いリンゴ、家族の団結を表すザクロなど5種類の果物と、蓮、ユリ、牡丹などの仏花が壇上に捧げられる。

多様な料理で、先祖への感謝の気持ちを表す

先祖へのお供え物
Mam Cung Gia Tien

酒、線香、ろうそく、紙で作られた衣服や靴なども供える。また、ハノイなどの大都市では、50万VND~の価格でお供え用の料理セットが購入できる(画像提供/Chau Hoai Anh)

 旧暦の7月2日、7日、8日、12日、14日などの吉日には、祖先への敬意を示すため、果物や精進料理、肉料理など多くのお供え物が用意される。祖先の祭壇では、一般的には果物を上に、料理を下に供え、おこわや茹で鶏などのほか、炒め物やスープも並べる。

 一族の長の家族は9つの碗と箸を、長男の家族は7つ、次男以下の家族は5つを祭壇にのせて、お供え物を捧げる人の家族内での地位を表す。旧暦7月15日には、霊魂が冥府に帰らなければならないので、子孫が精一杯の心尽くしで祈りを捧げ穏やかに過ごす日とされている。

功徳を積む、無縁仏や餓鬼、浮遊霊へのお供え物

餓鬼・浮遊霊へのお供え物
Mam Cung Chung Sinh

現代では市販のお菓子も供えられる。茹でたとうもろこしやさつまいもなども一般的だ。都市部ではバルコニーで供養することも(画像提供/Nguyen Bich Phuong)

お盆の間、現世に戻っても帰る家がなく、街を彷徨う餓鬼や浮遊霊に対しては、庭や家の外で米、塩、砂糖、おもゆ、果物、ポン菓子、線香3本、ろうそく2本などのお供え物を並べる。食道が細くなった餓鬼、子どもの幽霊などには、おもゆなど消化しやすい料理が欠かせない。また、霊の煩悩を惹き起こさないように肉料理は捧げない。

 霊は光を恐れるため、夕方に供養を行うのが一般的。即物的な報恩を期待してはならないので、供養の祈りには供養者の名前や住所を読まない。供養後、霊が家に入らないよう米と塩を庭や家の手前の道路に撒く。

旧暦7月に民間信仰による禁忌とは⁉

「鬼門の七月」には、夜遊びを控え、魔(Ma)や鬼(Quy)の潜む池や湖、川、森などに近づかないよう忠告される。また、道端に落ちている紙幣を拾うと災いを招くとされ、故意に拾わないようにする。

餓鬼や浮遊霊へのお供え物は、供養が終わるまで子孫たちが食べてはならない。線香が燃え尽きる前に食事をすると悪鬼の食べ物を奪うことになり、恨みを買うことになると信じられている。
地方や時代によってさまざまな禁忌があるが、これらは皆、長い年月をかけて育んだ人生の智慧と考えられている。危険な場所に近づかず、他人の所有物への欲を避けるなど、多くのことを現代に生きる子孫たちに教えているのだ。

©Nguyen Bich Phuong

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