第271回 国の垣根を越え音楽で繋ぐ ジャズを通じた日越交流

第271回  国の垣根を越え音楽で繋ぐ ジャズを通じた日越交流

野村 征央 さん
ジャズドラマー

多国籍メンバーとの刺激的な演奏
音があれば言葉はいらない
「この曲が良かったと褒めていただいたり、好きな曲をリクエストしてくれたり。ベトナムでの演奏は、多国籍の方々と共に音楽を奏で様々な人に楽しんでもらえる。そんな雑多な雰囲気が魅力ですね」

 日中は日系企業で働きつつ、夜はジャズドラマーとしてホーチミン市内のホテルやバーなどで演奏に明け暮れる野村征央さん。最低でも週3日、多い時には週4〜5日ステージに立つ。

 音楽仲間はベトナムはもちろん、イタリアやキューバ出身など国際色豊か。「好きなことなのでストレス発散にもなる」というが、その活動は趣味を超え、限りなくアクティブだ。

「とあるバーのジャムセッションで様々な国のミュージシャンと出会い、レストランでの演奏を始めました。来越当初は英語が堪能ではありませんでしたが、音を出せば分かり合える部分も多く、心が通じるのを実感しました」

 日本のジャズバーなどでは音楽を目的に店を訪れる人が多いが、ベトナムではBGMとしての需要が高い。会話の邪魔にならないように配慮しているが、意外や演奏にもきちんと耳を傾けてくれているという。

「ベトナムの人々も音楽が好きなんだと肌で感じます。演奏後、常連さんと音楽について話すこともあるんです」

才能あふれる仲間との出会い
現地ジャズシーンの未来を夢見て

現在、主な活動の場とする「メトロノームジャズバンド」では、ベトナム人ピアニストのレ・ニャット・グエン(Le Nhat Nguyen/写真中央)さん、ボーカリストのグエン・ティ・チャー・ミー(Nguyen Thi Tra My/写真右)さんとトリオを組む。

「2人ともホーチミン市音楽院の出身で、特にリーダーのグエンさんは、彼のピアノ演奏を初めて見た時、こんなにも弾ける人がいるのかと驚きました。ジャズが大好きで研究もよくしている。元々ドラムを叩いていたそうで、私のチューニングや機材などにも興味津々。ミーさんもジャズのほか、ポップスなども歌える才能豊かな人ですよ」

 店舗での定期演奏のほか、企業イベントへの出演もある。会場のBGMの演奏となるが、録音済みの楽曲を流すのではなく、生演奏に力を入れる傾向が強い。そのため、日本と比べ演奏できる機会や場所が多く、生演奏だからこそ音の深みを楽しんでもらえることに喜びを感じている。

「とはいえ、本格的なジャズバーはほぼありません。そこで、グエンさんの夢はジャズバーを作ること。もしその時がきたら、私も何かの形でお手伝いができたらと思っています。“ベトナムのジャズならここ”といった存在になれると嬉しいですね」

 ベトナムのジャズミュージシャンは30歳前後と若い人が多い。機会があれば、彼らと一緒に日本を訪れ、日本のジャズミュージシャンと共演できればと願う野村さん。ベトナムのジャズシーンは始まったばかりだ。

Information

野村 征央 のむら まさお

15歳からドラムを始め、ロックやジャズなど様々な音楽に触れる。2014年の来越後はホテルやバーで演奏。2021年から「メトロノームジャズバンド/Metronome Jazz Band」として「ココバーサイゴン/CoCo Bar Saigon」で木~土曜にレギュラー出演中。
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