ベトナムの日本人/須田卓哉さん/ベトナム弓道クラブアドバイザー

ベトナム人の弓道への情熱に突き動かされて。 教えるという立場ではなく、同じ目線で一緒に練習

Japanese_VNS_ED_201607 とある日曜の午後、ハノイ市内の体育館に赴くと、ベトナム人有志が運営する弓道クラブの演武が行われていた。長い和弓と矢を手にした袴姿の5人が、すり足で登場し、定位置から28m先の的に向かって順番に矢を射る。的中しても外しても表情を崩さず、時速200㎞ものスピードで矢がささる音が鳴り響き、凛と張りつめた静寂がそこにあった。 演武が終わると、携帯電話で撮影した動画をベトナム人の会員たちとチェックし、「入場が速い」、「前傾になっている」と、弓の引き方や作法を指導していたのが、クラブ設立時から関わっている須田卓哉さんだ。きっかけは、2012年に受け取った1通のメール。当時、日本語教師をしていた須田さんは、日本文化を伝えるものとして学生時代に使っていた和弓を持ってきており、それを聞きつけたベトナム人の青年からだった。 「当時は教えるつもりはまったくありませんでした。礼で始まり礼で終わるといわれる弓道では、『体配』という入場から退場までの一連の流れがあり、矢を射る動作はあくまで付随するものです。それを知ったらあきらめるのではないかと、あえてきつい練習を課しましたが何人かついてきて、結局どうしても弓道を習いたいというベトナム人青年の熱い思いに根負けしました」。 以来、教えるというよりは、一緒に稽古に励むスタンスで、時にまじめに、時にユーモアを交えて彼らにアドバイスをしている。「日本人相手でも難しい言い回しを伝えるときは苦労します」というが、基礎的な知識は、精神的な部分も含め、今ではベトナム人の先輩が後輩に自主的に教えてくれる。 弓道は究極のところ自分との戦いだ。己を偽らず、周囲と調和し、かつ美しくという「真善美」に達することが最高目標で、須田さん自身、「極限まで集中して周りの音が聞こえなくなり、自分と的しかなく、的に矢が吸い込まれていく」体験をしたことがある。このような「道」に魅了された会員はみな純粋で真剣そのもの。「きちんと弓を引くことができ、的にあたった時の彼らのうれしそうな顔はまず最初のやりがいですね」。 2016年4月、うれしいことがあった。メンバー数人と名古屋での昇段審査に初めて望み、審査を受けた全員が無事初段に合格したのだ。視線にいたるまで一挙手一投足を厳格に審査される中、リーダーのリン(Linh)さんは緊張を振り切って大舞台で的中。「長年がんばってきたメンバーが昇段したときは自分の事のように達成感がありました。自分と彼らの修練の方向性は間違っていなかったと再確認できました」。 現在、クラブ会員は約30名。今年の目標だった「ベトナム人有段者輩出」を達成し、2017年に「ベトナム弓道連盟設立」、2018年には「弓道世界大会予選突破」を目指し、日々修練に励んでいる。
須田卓哉 すだたくや 新潟県出身。2007年11月来越。弓道弐段。日本語教師を経て、日系企業に勤務。高校時代から弓道をはじめ、一時中断期があったものの、ベトナムの青年たちに触発され2012年に再開。現在は、ハノイ市内で週2回、ベトナム人会員とともに腕を磨く。
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