29屋的越南恋愛コラム／「それでも、尚、『道ならぬ恋』を／したいのならば・・・」／第35回

老若男女、富貴美醜、を問わず…

「しのぶれど　色に出でにけり　わが恋は　ものや思ふと　人の問ふまで（『拾遺集』）」。「恋の究極は、忍ぶ恋と見つけたり（『葉隠』）」。古来、日本人は秘める恋と偲び合いにロマンチシズムを見出し、その不便さ、報われなさを愛でる心持ちがあったのも、今は昔。老いも若きも男も女も、公衆の面前で、ベタベタいちゃいちゃするのが当たり前な昨今。当事者が美男美女同士であれば「まるで映画みたい」だし、その逆であれば「まるでマンガみたい」。どっちか片一方が飛びぬけていて不釣合の場合は「美女と野獣」か「世界の七不思議」。ともあれ、場の雰囲気を明るくするか、うっとうしくするかは、本人たちの人徳次第とはいえど、どうにも周囲が扱いに困るのは、そのカップルが明らかに「金銭仲介」であったり、「不倫＆浮気」であったりした場合だ。時間とお金とエネルギーに余裕がありすぎて「ボーナス無敵タイム」なベトナム暮らし。日本であれば、それなりのお金と地位か、遊び人スキルが要求される類の火遊びでも、ここならば敷居は低い。かといって、恥じ隠しもせず、堂々と、もしくは「目撃してくれ」と言わんばかりの場所で遊び呆けるのは、いったい如何なる心算なのか？

汝、見せびらかすなかれ！

始皇帝亡き後の秦王朝を打倒し、ライバル劉邦との覇権争いを有利な形で乗り切り、このままいけば次の天下人となるはずだった、古代中国屈指の英雄、項羽。せっかく、地味豊かな中原を基盤にし、益々勢力を固めるチャンスだったのに、「大出世したのに、故郷に錦を飾れないんじゃ意味ないじゃん？」と、生まれ育った楚国に引込んでしまう。ある識者が「楚人はサルが冠をかぶっただけって言うけど、マジだな（呆）」とつぶやいて、大炎上。というか煮殺されるエピソードがある。結局、天の時を逃した項羽は、劉邦率いる漢に大逆転負けを喫するわけだが、男の「俺、スゴイっしょ？」的な見せびらかしは、もはや本能であり、時にはすべてを失うほどの失態にもつながり得る。どうしても道ならぬ恋をしたいのであれば見せびらかすべきではないし、他人に見つかるべきではない。ガッツで死ぬまで隠し通すだけの、羞恥心と罪悪感。自己コントロールと、完璧なアリバイ工作のための余分な出費は、せめて覚悟すべし！　