29屋的越南恋愛コラム/「籠の鳥」のわが身を、/ 憐れみすぎる男子たちに/第32回

「結婚とは鳥籠の ようなものだ

結婚についての名言箴言が数ある中、フランスの随想家モンテーニュの残したものに、こういうのがある。 「結婚とは鳥籠(とりかご)のようなものだ。外にいる鳥は中に入ろうとするし、中にいる鳥は外に出ようと必死にもがいている」。   古今東西、およそ家庭をもっている男性諸氏で、奥方や恋人から「ちっともうちに帰らないで、外で何やってるの(激怒)!?」と言われたことのない男子は、おそらく一人もいないはずだが、これだって事情はさまざま。ある人は仕事、ある人は趣味、ある人は世間付き合いで、本心から楽しくて出かけていくものもあれば、浮世の義理で仕方がないものもあるのだが、そのあたりの事情はあまり斟酌されないのが悲しいところ。 「有罪」の根拠は、ただ一点。彼女たちが貴男を必要としているときに、「貴男が、そこにいなかった」ということに尽きる。「そんな無茶な!?」というなかれ。男にとってみれば、「もっとも信頼できるパートナーに、『背中』を預けた」という信頼を託しているつもりでも、女にしてみれば「もっとも自分を大事に扱うべきパートナーに『ほったらかし』にされた」という感情が、疑惑や焦燥を呼ぶ。さらには恨みつらみにまで変化することもあるのだから。特に夜や休日も、各種イベントや、来客接待の多いこの街では、なおさらのこと。これが、ほんとの「放置民(ほーちみん)シティ」なんつって。あっ! モノを投げないでくださいっ(泣)。

「覆水盆に返らず」とは、 どちらの立場の物言いなのか?

紀元前11世紀の中国に太公望呂尚という人がいた。この男は若い頃から本ばかり読んで、ごくつぶし呼ばわりされていたニートだったのを、釣りに出て知り合った周の文王に見初められ、その軍師となり、暴政を敷いていた殷王朝を倒す立役者となったことで世に知られている。この人の残したもう一つの有名なエピソードが「覆水盆に返らず」という諺(ことわざ)だ。   若い頃に散々苦労を掛け、愛想尽かして出ていった元妻が、大出世をした呂尚のもとに現れて復縁を申し出た際、盆の水を庭にぶちまけて、「こぼれた水は元通りにならない=ラブ・イズ・オーバー」と、元妻の不明と薄情さを非難したというのだが、これって結構ひどい話だと思うのは私だけだろうか?  世の妻の誰もがみんな「不良株の値上がり」を辛抱強く待てるわけではないし、このおっさんがニート時代に食えていたのは、少なからず元嫁のおかげなはずだ。自分が家庭を顧みず、非常識に生きるつもりなのであれば、パートナーにもそれを強要するべきではないし、掟破りの「逆・覆水」を嫁さんから喰らう覚悟も必要だろう。   日常些細な、パートナーの不安や不満を、共にシェアしてこその夫婦。言いたいことはいろいろあるかもしれんが、ここはガッツだ、サムライ野郎ども!
29屋(にくや) 食材&弁当屋の店主。本業の傍ら、かつては「29屋に訊け!」など本誌人気コラムを担当。本コーナーでは、ベトナム恋愛模様をちょっぴり辛口、ときどき優しく(!?)、生あたたかい目で考察する。
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