ベトナムの日本人/荒島由也さん/スターキッチン創業者

美味しい「和スイーツ」が簡単に作れる、では足りない 「輝く時間」を提供するのが仕事です

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写真/大池直人

ベトナム人の味覚は『甘さ控えめ』。砂糖の量なら日本人の半分程度かな。フルーツをよく食べますから、その糖質がベースにあるのかもしれませんね」。   2013年7月、「和スイーツ」のクッキングスタジオ「スターキッチン」を創業した、荒島由也さんはこう語る。まだ30歳の青年実業家だ。教えるのは「桜シフォンケーキ」、「ほうじ茶ブリュレ」、「抹茶ロールケーキ」、など約20種類。和の素材を生かした味、スタイリッシュな出来上がりと心地よいスタジオが人気を集める。   1コース2時間で1つのスイーツを完成させるが、料金は40万~50万VNDと決して安くはない。しかし、生徒は若いベトナム人女性を中心に200人ほどと数多く、2014年1月からは和食作りもコースに加えた。一言でいえば、大繁盛だ。   スイーツ作りを教えるのは荒島さんの他、ベトナム人スタッフが4名と外部の講師が2名。しかし荒島さん、スイーツ作りは全くの未経験だった。開講の準備段階で日本人専門家と一緒にスイーツやレシピを相談しながら、実践で学んでいったという。では、なぜクッキングスクールを? それもベトナムで?   2012年夏、外資系コンサルティングファームを休職した彼は、ソーシャルビジネス支援のためにベトナムにいた。企業のオーナーに経営的なアドバイスをするうち、「自分には迫力がない」と感じるようになったという。 「小さな企業でも社長が背負っているものは社員と違う。相手から『ところでお前、やったことあるの?』と言われている気がしました」。   これが起業のきっかけとなる。まずはコンサルタントとしての手腕を生かして、東南アジア市場をリサーチ。考慮の末、成長著しいベトナムに決めた。次に、何を提供するか。2ヶ月ほどベトナムで暮らした彼が感じたのは、エンターテインメントの少なさだ。外資系企業に勤める優秀なOLでも、退社後は友人とカフェに行くくらい。彼女たちに「知的でお洒落な楽しみ」を提供できないか。そこで生まれたアイデアが、味だけでなく仕上がり、デザインにもこだわった「和スイーツ」だった。   2012年11月から準備をスタート。材料の調達、レシピ作り、スタッフの教育、スタジオの施工などを終え、2013年5月にプレオープン。7月から本格的に開講した。約半年が過ぎた今、こんな感想を語る生徒が多いという。「美味しくてきれいなお菓子が、こんなに簡単に作れるなんて!」。ただ、荒島さんの思いは少々異なる。 「美味しい、技術を学べる、これらは当然のこと。生徒同士のコミュニケーションや、スイーツを介した家族・友人との触れ合いなど、格好良く言えば『輝く時間』も提供したいと思っています」。   スタッフTシャツの背中にはこう書かれている。「Make your Life Sparking」。
荒島由也 あらしま ゆうや 東京都出身。スターキッチンの創業者兼CEO。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現日本アイ・ビー・エム株式会社)に入社。経営コンサルタントとして5年間勤務後に退職。2013年5月にスターキッチン(STAR KITCHEN)を設立。
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