新興国における企業の紛争解決

昨今、新興国で日系企業が紛争に巻き込まれるケースとしては、対ローカルや外資企業、はたまた政府等、様々な背景が増え、内容・金額共に商店レベルから国家レベルまで多岐にわたっています。   紛争において、一般的に各国家は権力の一部を「司法権」として当事者が権利を主張できる場面を用意し、強制執行への手段を与えます。ただ、国家権力を体現する裁判所には、各国家の問題点が最も色濃く生じます。特に新興国ビジネスを行う企業にとっては、非常に悩ましい問題となっています。   ニューヨーク条約拡大や仲裁機関整備によって仲裁の国際枠組みが整備されつつあることから、越境取引では、紛争解決のために仲裁手続きを契約で合 意することが一般的です。手続きにより仲裁機関が下した判断は、原則として裁判所の判決と同様の効力を持ち、最終的な確定力を有します。   他方、その後引当てとなる財産の強制執行を管轄する裁判所の関与は限定的と定められています。しかし新興国の場合、裁判所が法律の立てつけを超えて関与してくるパターンも多く、これが大きな問題となっています。   いずれにせよ、どんな紛争解決手段を選ぶかは、契約上最も大切な事項のひとつ。他国で利益を上げるとは、常に母国の後ろ盾が弱い環境の中にいることを十分に意識する必要があるのです。
野口 真吾 のぐち しんご 慶応義塾大学卒、第二東京弁護士会、渥美坂井法律事務所所属。2012年に韓国系最大手・JPに参画、越内の執務開始。翌年3月より、ヴァン弁護士(元計画投資省、夫は司法大臣)所長のAPACへ出向。
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