ベトナムの日本人/大槻修子さん/FIDRベトナム事務所代表

異なる文化や価値観の人びとと 同じ目的を目指せる楽しさに目覚めてしまったんです

Otsuki 「小さなNGOによる支援の利点は、点で成果を出せること。相手国の人びとが小さな成功を重ね、振り返れば大きなことを成し遂げていた。それが理想です」。 はきはきとした口調で熱を込めて語るのは、「FIDR(ファイダー)」ベトナム事務所代表の大槻修子さん。FIDRは、アジア各地で貧困地区の人びとの生活向上に努めるNGO団体だ。ベトナムでは中部クアンナム(QuanNam)省の少数民族コトゥ(CoTu)族居住地域で活動している。2012年にはベトナム政府より、「貧困削減に寄与したNGO50 選」に選ばれた。 元々、熱帯雨林や砂漠の植物に興味があり、大学でアグロフォレストリー※を専攻した大槻さんは植物の「職人」を目指し、造園緑化業に就いた。途中、休職して青年海外協力隊や国連開発計画に参加。そこで、植物や農業の技術よりも、それらに関わる「人」そのものに興味が移っていることに気付いたという。 「日本と異なる文化的背景や価値感をもつ人たちと、同じ目的に向かって働ける面白さに病みつきになってしまったんでしょうね。人を主体とし、人に焦点を当てた支援事業に携わりたいと思うようになったんです」。 2004年からはFIDRへ所属し、コトゥ族の人びとが暮らす地域の開発事業に取り組むこととなった。現地では、支援する側の存在が前面に出ない姿勢を心がけたという。 「学校を建てたいとなったらまず、校舎や先生、机、教科書など、必要なものの一覧表を作ってもらいます。関連する役所や寄贈してくれそうな人・団体もリストアップ。誰に何を負担してもらえそうかを、一緒に検討していくんです」。 あくまで彼らの力で進めることが大切なのだ。「FIDRへの寄付の申し出の中には、学校を建てたいという方もおられますが、そういったことは最後まで明かさず、ぎりぎりまで自分たちで提供者を見つけてもらいます。その中で彼らが、何が本当に必要なのかを整理し、少しずつ実現させていくことを学んでくれるのです。 これは暮らしを総合的に改善する地域開発でも同じです。そうすれば、いずれ私たち外部からの支援は必要なくなると思います」。 現在、大槻さんがFIDRの仲間たちと取り組んでいる事業の1つが、コトゥ族の人たちが主体となった観光事業への支援だ。ダナンから日帰りで村を訪れ、伝統料理やダンスを楽しんでもらい、自然と調和した彼らの暮らしや、代々受け継いできたコトゥ織りを見学。コトゥ織りの小物類は、現地で購入もできる。 「織物事業は、コトゥ族の文化を多くの人に知ってもらい子孫へ伝えていきたいという、彼ら自身の希望で実現しただけに、軌道にのって嬉しいです」。 2011年からは輸出も始まっている。大槻さんたちの情熱は、実を結びつつあるようだ。 ※植樹した木の間で農作物を育てることで、土地の持続利用や環境保全を図ろうという農法
大槻修子 おおつきのぶこ 東京農業大学卒業後、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊隊員や造園緑化業、国際連合開発計画(UNDP)の農業専門家を経て、2004年から公益財団法人「国際開発救援財団(FIDR)」ベトナム事務所代表に。観光事業については、Eメール(日本語)で問い合わせを。 Eメール:fidrvn@fidre.or.jp - cotucbt@fidr.vn Website:http://www.fidr.or.jp
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