29屋的越南恋愛コラム/「ベトナム人の『干支信仰』はプロ ポーズに際して、どれほどの強敵 となるのか?」/第16回

29屋的ベトナム恋愛コラム 超の字がつくほどのリアリスト民族なのに・・・?

民族の歴史レベルでは有史以来大国にいじめられ続け、個人の日常生活レベルでも常に「ひったくり&ぼったくり」の危険性にさらされ続けているおかげで、良く言えば「用心深い」ベトナムの人々。悪く言えば「人を見たら、家族以外は自動的に『敵』か『金づる』に分類」するほど、世知辛くなければ生き残れなかったようだ。 その一方、人間という生き物を信用しない代わりに、風水だの仏教祭祀だのといった縁起かつぎにこだわることは、同時代を生きる日本人の比ではない。 それも、田舎のお年寄りならば、ともかく。都市部に住むドイモイ&経済開放万歳な若者達でさえも、やれ「○○をするには日や方角が悪い」だの、「今日はアンチャイ(菜食)の日だから、肉抜きするわ」だの、普段の刹那的快楽主義者っぷりを考えると意外なほどの敬虔な顔を見せてくれることがあるものだ。

「キミ、干支は何?」

さて、ことベトナム人との恋愛や結婚においても、このあたりのエピソードには事欠かないもの。先方の親に挨拶に行った際、「何の仕事してる?=収入&甲斐性」とか、「将来は日本に帰るの?=将来の人生設計」などを確認されるのと同じ位の重要度で、「キミ、干支は何?」と聞かれるそうだ。 この相性占い、ベトナム人にとっては相当だいじな要素らしく、結果によっては交際や結婚を許可されない場合もあるのだという。たとえば「猫(日本で言う兎)とネズミは、トム&ジェリー的な意味で最悪」や、「寅と牛は、牛が食われて悲劇的結末」などなど。 カカア天下VS 旦那の逆ギレDVが三面記事を賑わせることの多いベトナムならではの弱肉強食な理由づけが多いのだが、不幸にして愛した人の干支が自分と合わなかった場合、どうすればいいのか? このあたり、昔は、占い師に心づけを払って「実は仲良し」的な新解釈を用意してもらったり、グラビアアイドル並に生年詐称したりという手を使っていたようだが、何かの拍子にバレてモメる元になったり、夫婦喧嘩の度に思い出されて「あ、そういえば!」と相手の怒りに油を注ぐことになったりで、あまりよろしくない。 結局、十分な稼ぎと愛情を以って、何とか正面から本人&ご両親を説得し、以後は「故障持ちの野球選手」並みに、家庭の問題を「違和感」の段階でケアしながら生きていく覚悟が必要だ。 相手の信心は尊重するべきだが、自分が信じてないジンクスに負けるのは、日本男児としてよろしくないと思うのだ。誠意大将軍、ガッツ!
29 屋(にくや) 食材&弁当屋の店主。本業の傍ら、かつては「29 屋に訊け!」など本誌人気コラムを担当。本コーナーでは、ベトナム恋愛模様をちょっぴり辛口、ときどき優しく(!?)、生あたたかい目で考察する。
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