男のローカルひとり飯／第15 回 ヴェジタイズ・ミー

「ティブ」といえば、ホーチミン市のアッパーベトナミーズ店の中でも最高峰に君臨する名店。おいそれと自腹で行ける店ではない。が、精進料理版のこの店であれば、あのまっとうな調理をいつもの予算でいただける。肉食でも草食でもない雑食系男子の自分としては、安くてうまければよい、というわけだ。

落ち着いた調度品や大きな抽象画などが飾ってあり、このプライスなのに雰囲気もなかなか。１人で食べていても、やはり内装が良い店の方が贅沢な気分で心地よく過ごせるというものだ。「ミーホー／ Mi Kho」 という麺にスープを後がけするスタイルの料理を頂く。

麺自体にはうっすらとしか味はついていないが、フクロタケ、人参、ネギ、厚揚げ、しいたけ、揚げ玉ねぎ等、盛り付けられた野菜にはしっかりとした味付けがされていて、一緒に食べてちょうど良い調味の具合。それぞれの素材の歯ごたえの違いが楽しめるよう計算されているのもわかる。

別添えのスープは野菜のみがベースのブロード（出汁）。くどくないものの旨味はしっかりで、玉ねぎの甘さや香味野菜の風味をしっかり感じる。味がぼけないように強めのコショウで締め付けてあり、ベジタリアンという響きから連想される味の弱々しさは一切感じさせない。

本日のひとり飯： ティブヴェジタリアン・チャイ Tib Vegetarian - Chay 住所：11 Tran Nhat Duat St., Dist. 1 電話：(08) 3843 6460 営業：11:00 ～ 14:00 / 17:00 ～ 22:00 「ミーホー／ Mi Kho」４万5000VND（約180 円）

井之原 四郎 孤高のフーディーを自称するフードライター。食べ物である限り、食べられない物がないのが自慢。美味い料理を食べているときは自分だけの世界に入り込んでしまい、時には涙を流すことも。酒にも目がない。