能塚 洋一さん/サンレッドリバー社長

人生をベトナムに賭けてきた17年間 スタッフが自立してくれる姿が最高の「恩返し」

能塚洋一 のうづかよういち ベトナムの日本人「ベトナム人に恩返しをしてもらえる日が来るまで、日本に帰らない覚悟でいます」。 迷いなくそう言い切るサンレッドリバー社長の能塚洋一さん。営業兼ゴルフ焼けだという黒々とした肌に、射抜くような鋭い眼差しが印象的だ。 大手企業のベトナム進出が相次いだ1995年に「株式会社はせがわ」の海外事業展開に伴い初来越。1999年4月にオフィスとサービスアパートメントが一体化した複合ビル「サンレッドリバービルディング」が完工した。アジア通貨危機の影響や法的手続きの問題など、決して順風満帆なスタートではなかったという。 「十円禿げができたこともあったし、日々苦労は耐えなかった。ただ、海外においてアウェイで仕事をする以上、困難に直面するのは当たり前。やると決めたからには、腹を据えてやるだけです」。 大手企業に追随する形で、裾野産業のベトナム進出が目立ち始めた2010年、他のビルとの差別化を図るべくサービスオフィス事業を開始。建物の奥や窓がないなど、通常売り出しにくいスペースを区分けし、最短1日から貸し出す。 「右も左も分からずに来越する方々にとって駆け込み寺のような存在でありたいですね。集中して仕事に取り組める環境はもちろん、日系ならではの『普通』のサービスが我が社の強み。この国では『何で、一体どうしてこんなことに!』と毎日が驚きの連続ですから、日本人が持つ普通の感覚を共有できることに大きな価値があると感じています」。 これからベトナムでビジネスを始めようという人にはこう助言したいという。 「大切なのは現地スタッフが働きやすい環境を作ること。特に北部の人々はプライドが高く、信頼関係を築くのには時間がかかる。でも、いったん懐に入ると身内意識を持ってくれるんです」。 それも、うっとおしいほどのね、とドキリとする言葉を付け加え、いたずらっぽく笑う。時折憎まれ口を叩きながらも、スタッフに対する愛情は隠しきれない。なんといっても離職率の高いベトナムにあって、サンレッドリバー社では勤続10年を越えるスタッフが9割にも及ぶのだ。 「サービスオフィス事業は、彼らにとっても新しい挑戦です。少しずつ成長も垣間見られ、責任を持って生き生きと仕事に励んでくれています」。 それでも「まだまだ隙だらけでほっとけない」と、悔しそうに顔を歪ませ太ももをパシンと叩く。 「17年間、自分の人生をベトナムに賭けてきた自負が私にはあります。私の指示なしでも、彼らが先を見据え、お客様が求めていることを自ら判断し行動する姿を早く見たい。それが私の1番の望みです」。 「能塚さんがいる限り、絶対辞めません」とスタッフに言われた時が最も嬉しかったという。淡々と語る口調が、スタッフへの思いを語るとふいに乱れる。彼らの成長こそが最大の「恩返し」。その日を心待ちにしながら、飽くなき挑戦は続く。
能塚洋一 のうづかよういち 1960年、福岡県生まれ。「お仏壇のはせがわ(現株式会社はせがわ)に入社後、「サンレッドリバー」の事業立ち上げのため1995年に初来越。同社の「株式会社やずや」への事業譲渡後の2005年、社長に就任。2010年より、最短1日からレンタル可能なサービスオフィス事業を開始した。
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