29屋的越南恋愛コラム／「愛がなければ生きられないが、／愛だけでは生き残れないんじゃね？」／第01回

愛があれば、他に何もいらない？ホントのホントに本当か？

僕がベトナムに住み始めてから16年。自身を含めて、日・越・老・若・男・女・貧・富の間で、さまざまな形の恋愛が生まれたり、壊れたり、えらいことになったりしたのを目の当たりにしてきた。日本人が想像する以上に、ベトナムで外国水準の暮らしをするにはお金がかかるし、異文化で育ったパートナーを相手に真心を説く作業はしんどい。また反面、ベトナム人が考えているほど一般の日本人はお金を持っていないし、辛抱強くもなければ勇敢でもない。清く貧しく美しいはずの理想と、予想以上に厳しい現実のギャップを埋める戦いが破綻した時、「戦後処理」は悲惨を極める。ある者は「すってんてん」になって帰国し、ある者は昼メロさながらの修羅場を公衆の面前で繰り広げ、またある者は「次こそは」と新しい理想のパートナーを求めて転がり続け、またしても同じ目に遭ってしまう。愛さえあれば、お金や国籍、歳の差、その他なんてなんとかなる！」と誓った２人が、なぜ、こんなことになってしまうのか？

人生に必要なもの、それは…

べトナムではフランス式に「シャルロ」と呼ばれるチャーリー・チャップリン。晩年の名作『ライムライト』の劇中、彼が演じる往年の大コメディアンが、自殺を図った若き踊り娘に、こう諭す場面がある。「人生に必要なもの。それは、愛と、勇気と、ほんの少しのお金だよ」。彼自身、幼少の頃は、父がアルコール依存症で野垂れ死に&母は精神病院を出たり入ったりの環境で「お金」がない。やっとのことで成功したら、正式な結婚だけで４回＆色恋沙汰のスキャンダル多数と「愛」が迷走しまくり。なんとか落ち着いた晩年、「勇気」がありあまってハリウッドやアメリカ政府にケンカを売り、最後はスイスに脱出。人畜無害でハートタッチなイメージの裏には、星飛雄馬でさえも泣いて謝るような壮絶極まりないアップダウンと戦いの人生があったのだ。そこで必要とされた「愛」と「勇気」と「お金」の質と量のレベルは、名もなき庶民の我々には想像もつかない。しかし、この三者があったりなかったり、使い方を間違ったりしたおかげで思いもよらない悲・喜劇が発生し、自分や他者の人生に影響を及ぼしていくことは、誰の身の上にでもあるんじゃないだろうか？　特に、異国の地・ベトナムで、色んなものと日々戦いながら日本人がする恋愛においては、だ。というわけで、チャップリンの名台詞を看板に戴き、気の向くままに書き散らかす、月に１度の越南恋愛コラム。御贔屓のほどをよろしくお願い致します。