舞踊団員は女性の舞踊家46人、男性の舞踊家30人ほどから構成され、王立芸術大学を卒業した優秀な学生の中から、毎年5人ほどのみが、その狭き門へ入ることが許される
[それは、世界の宝となり。]
伝統を今に伝える王立舞踊団。
「内戦以前は100人以上いた先生たちも、今では6人だけ。私たちが元気なうちに、若い踊り手をもっと育てなければならないんです。」そう語るスム・ムタさん(70歳)は、プノンペンにあるカンボジア文化芸術省芸能局に所属する王立舞踊団の先生だ。
カンボジア王室は古くから専属の舞踊団を抱え、その踊り子たちを国王自ら厳選してきた。内戦期にその存在は一時失われてしまったが、1979年に文化芸術省の所属となり復活。そこでアプサラの舞をはじめとする宮廷古典舞踊の指導にあたるムタさんは、舞踊団がまだ王宮に存在していた頃からの古典舞踊を知る、歴史の生き証人というわけだ。
「アプサラの舞はタイやインドネシアのものと似てはいますが違います。蛇神ナーガをイメージした、ゆったりとした体の動き、鳥の飛翔を感じさせる足を大きく跳ねあげるポーズなどは、カンボジア独自のもの。私の専門は、本来は舞踊の衣装ですが、長年目と体で覚えてきた舞踊は、今も私の中に息づいているのです。」
王立舞踊団は芸能局所属の団員やプノンペン王立芸術大学の教師などで構成されている。演目は、「アプサラの舞」の他、「テップ・マノローム」と呼ばれる天上界の踊りやミャンマーの伝統舞踊のスタイルを取り入れた「パイレンのクジャク」など、約20種類以上。現在、定期公演は行っていないが、王国の行事や海外などで、1年に約20数回の公演を行っているという。
(写真左上)宮廷古典舞踊を伝承するスム・ムタさん
(写真右上)現在、王立舞踊団で主役を演じるサム・リムソテアさん(25歳・左)とケオ・テダさん(26歳・右)。共にプノンペン王立芸術大学の教師であり、若手のホープ。「カンボジアの古典舞踊は、王も国民も、全てのカンボジアの人々のために踊られるもの。好きでないとできない世界ですが、私たちが踊ることで、皆が幸せになれればと願っています」と語ってくれた
|