それは、世界の宝となり。
アプサラ、それはカンボジアの心。
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右)アンコールワット内に残る乳海攪拌のレリーフ。ヴァースキを引く神々の上に、生まれたばかりのアプサラが舞っている |
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カンボジアが誇る世界遺産アンコールワット。その第1回廊東側壁面にあるヒンドゥー教天地創世の神話・乳海攪拌のレリーフには、ヒンドゥー教3大神の1人であるヴィシュヌ神が大海を攪拌し、不死の甘露アムリタを生み出そうとする様子が描かれている。
マンダラ山に絡んだ大蛇ヴァースキを綱代わりに、88体の神々と92体の阿修羅が綱を引き合い、大海を攪拌。1000年の後、大海は乳海と化し、遂に不死の甘露アムリタを手に入れるという物語だ。その乳海を攪拌する際、アムリタと共に様々なものが生み出された。ヴィシュヌ神の妃となるラクシュミー、雷神インドラの乗り物となる3頭の象アイラーヴァタ、そして乳海の泡から生まれた天女アプサラである。
アンコールワット内には、乳海攪拌図に描かれたアプサラの他、当時宮廷に仕えた踊り子たちをモチーフとした女神デヴァター(アプサラともされる)など、大小それぞれ2000体を越すアプサラ(デヴァター)が刻まれている。当時、踊り子たちは、天界と現世を行き来する存在とされ、故に信仰厚きカンボジアの人々にとって、その舞もまた特別なものであった。そして現在、カンボジアの地には、カンボジアの心とも言えるその舞踊の伝統を連綿と受けつぐ人々の姿があった。
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