<ハンバック通り>
人知れず、街を見守る
ハンバック通りの神々たち
ハンバック通りに移り住んだハイズオン省とタインチ県の人々は、それぞれ自分たちの始祖を奉るデン(Den)と呼ばれる祠を、この道に2つ作った。1つは102番地にあり、もうひとつは42番地。しかし、祠があるのは路地の奥のそのまた奥。観光客の目には決して届かない場所に、ひっそりと奉られている。
102番の祠は、これまで2回ほど改修工事が行われ、路地の入り口に看板や旗が掲げられているため、場所は比較的分かりやすい。祠は普通の民家の2階を借りたような雰囲気で、周囲には路地に面した台所などがあり、人々の生活と一体となっている様が見て取れる。対して42番がある場所は、周囲に何の表示も無く、本当に祠があるのかと疑うようなところ。民家の横の路地を奥に進むと、薄暗い中、ひっそりと神々が腰を据えている。
この2つの祠は、かつて堂々と表通りに面し、周囲には祠のための広い敷地も持っていた。しかし、植民地支配や度重なる戦乱により、祠の管理者たちは次々とこの場所を立ち去り、戦後の混乱にまぎれ、人々が勝手に祠の土地に入り込み生活を始めたのだという。とはいえ、さすがに神様の住む本殿に手をつけることはできず、現在も本殿だけが狭い通路の裏にひっそりと残っている。そうした歴史に翻弄されてきた2つの祠だが、今でもこの通りに住む人々の信仰は厚く、旧暦の1日、15日には、参拝する多くの人で賑わうという。
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