<南北統一鉄道が行く>
峠を越えると、
そこは白砂の海岸
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最新型車両のSE2。ホーチミン市〜ハノイ間の運賃は、ソフトベッド97万7000ドン(約6830円)〜 |
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ダナンでS6号に別れを告げ、現在ベトナムで最新の列車SE2に乗ることにした。ソフトシートにエアコンと、まさに至れりつくせりの設備。天井には扇風機にかわり、韓国製のTVまで備え付けられている。シートもリクライニングつき。これまでの腰の痛さを和らげるように、私は深くシートにもたれこんだ。
ダナンからフエへの間には、2005年6月にトンネルが開通したハイヴァン(Hai Van)峠がある。その昔、南北の交通の難所として旅人たちの前に立ちふさがり、気候も人の性格もこの峠を境にして全てが変わるといわれている。車での移動はトンネルの開通により大きく改善されたが、列車はこれまで通り、峠のすそをくねくねと山肌に貼りつくようにして越えていく。
ダナンを出発した列車は間もなく前方に峠を捉えた。右手に海を見ていると、線路は少しずつ緩やかな傾斜をとり、列車の周囲の風景もいつしか生茂る木々へ。吹き込む風も、どこか森の匂いが混じったものとなっていた。
途中、列車用の小さなトンネルを幾つか抜けると、さっきまで横にあったはずの海が、いつのまにか眼下に広がっていた。重い車体を少しずつ引っ張って、列車は森の中を登ってきたのだ。曲がりくねったレール、普段決して見ることのできない絶壁からの風景。その中を、切り立った崖にしがみつきながら、列車はどうにか進んでいく。
峠越えも頂上を過ぎ、線路は緩やかな下りとなった。眼下に広がる寄せては弾ける波と、木々の美しいコントラストも、あと少しばかり。列車は徐々に高度を下げながら、鬱蒼とした木々のトンネルを抜ける。
すると突然、開いた視界の先に真っ白な海岸線が見えた。ハイヴァン峠の北すそに位置する、漁村ランコー(Lang Co)村だ。左手に見える山腹にポッカリと開いているのはハイヴァントンネル。このトンネルと、そこから伸びる橋は、日本の援助でできたものという。
近年、ここには外国人観光客が多く訪れるようにり、それに伴いリゾート開発も盛んに行われている。しかし、海の向こうに伸びる白砂と、打ち寄せる波。これだけはいつまでも変わらずにいてほしいと、願わずにはいられなかった。 |