序章 あの味を求めて南の島へ
「命の水」のふるさと
さっそく家に帰って、自宅のヌックマムのラベルを見てみる。そうすると、ちゃんと「フーコック産ヌックマム」とラベルに書いてあるではないか。小皿にとってなめてみる。しかし、友人宅で味わったヌックマムとは違う。それではと、翌日スーパーへ行ってみた。そこにも、フーコック産のヌックマムは溢れていた。棚に並んでいるヌックマムの半分が、フーコック産だったと言っても良い。お店の人に尋ねると、「ここに数字が書いてあるでしょう? これが高いほど美味しいんですよ」との答え。一番高い「40N」のものを何本か買って帰り味見をした。違う。やっぱり友人宅で味わったヌックマムとは、違うのだ。
「あれから、フーコック産のヌックマムを買って、味を見てみたんだけどさあ、君のところのヌックマムのように美味しいヌックマムは見つからないんだよ。あれって、製造元はどこなの?」友人宅に電話して尋ねてみた。
「フンタン(Hung Thanh)っていう会社。でもそこの製品はホーチミン市では、なかなか手に入らないんだって。」
私の落胆振りが、電話口の向こうでも感じられたのだろうか。数日して、その友人からこんな電話がきた。「母の知り合いは、そこの会社の社長さんなのよ。あなたの話をしたら、ヌックマム工場を見学させてやるから、フーコックまで遊びに来ないかって。どう、行ってみない?」渡りに船とはこのことか。さっそく、私は週末の休みを使って、ヌックマムの島・フーコックを訪れることにした。
小さなプロペラ機が降り立ったのは、おもちゃのような小さな空港。迎えに来てくれたバイクタクシーで、フンタンの社長さんが経営しているという、ガンサオ(Ngan Sao)リゾートに向かう。空港があるユーンドン(Duong Dong)は、島で一番大きな町。編み笠のおばさんが行き交う市場と、そこの岸壁に横付けされた、見渡す限りの漁船が港町の活気を感じさせる。しかし、ものの10分も走らないうちに町は終わり、道路は赤土の未舗装路になった。バイクにしっかり捕まっていないと、振り落とされそうなデコボコ道を行くこと、20分、ガンサオリゾートに到着だ。
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フーコック島への旅(SketchTravel) |