かつて宮廷楽士になれるのは男性のみだった。しかし今では楽団員の約半数にあたる32人が女性。そのうちの1人、Tran Thi Xuan Huong(チャン・ティー・スアン・フン)さんも、音楽家の家系に生まれている。
「私の場合、おじいさんがやはり伝統音楽の演奏家。その影響もあったのでしょうか、子供の頃から最近のポップスよりも、古い音楽に興味を持ってました。だからフエ芸術大学の付属中学校に入学して以来、ずっと伝統音楽を学んで来ました。」
フンさんも幼少の頃からフエ育ち。中学から高校にかけては、伝統音楽一般を学んだが、1996年フエ芸術大学に入学した後は、雅楽科で宮廷音楽を専門に学ぶようになったという。
「Tranh、Bau、Nguyet、Nhiと呼ばれる、筝や琴などの弦楽器を担当しています。琴は、女性が演奏する楽器と決まっているので、かつての宮廷音楽では使われなかったそうですが、我々の楽団では曲目によっては使うこともあるのです。」
彼女の才能は学生時代から注目され、大学生の時には、当時参加していた楽団の一員としてフィリピンやタイなど国外にも演奏旅行へ出ている。2000年に大学を卒業した後は、すぐに宮廷音楽団に参加。以来、楽士として活動を続けている。「勉強を重ねるほど、演奏を続けるほど、次第にベトナムの伝統的な音楽が好きになってきました。」というフンさん。かつては男性のみだった宮廷音楽の世界に、フンさんのような女性楽士が加わることで、伝統の上に新たな魅力が加えられていくことだろう。 |