世代を超え、国境を超えた
熱意と協力関係で
フエの宮廷音楽が蘇りました
「宮廷音楽が無形世界遺産に登録されるという通知が来た時は、やはり嬉しかったですね。」と語るのは、現場の楽団員をリードする副団長で、彼自身も楽士の1人であるTruong Tuan Hai(チュン・トゥアン・ハイ/上の写真左)さん(50歳)。ハイさんも音楽家の家系で、Tuong(主に宮廷で演じられた古典劇)の音楽の演奏家を母に持ち、何と舞台の上で生まれたという。13歳で音楽の道を志して以来、ずっと伝統音楽の世界で生きている人だ。
「フエ芸術大学内に宮廷音楽を専門に勉強する雅楽科ができたのが、復興への大きな第一歩でした。実は、そこには日本からの物心両面にわたる援助があったんですよ。」グエン朝滅亡以降、民間で細々と受け継がれていた宮廷音楽。1994年にフエで開催されたユネスコの会議で、その保存の重要性が各国の学者から指摘された。これを受けて研究に乗り出したのが、音楽学を専門とするお茶の水女子大学の徳丸吉彦教授、大阪大学の山口修教授など、日本の研究家たち。トヨタ財団も後援に入り、同年、雅楽科が設立された。
「生き残っていた元楽士達も、宮廷音楽再生のため、高齢をおして教えに来てくれました。」卒業生を中心に編成された宮廷音楽団が演奏を始めたのは1998年のこと。平均年齢26歳という、若い人たちの集団だ。
楽団では今も、ティーさんをはじめとする複数の元・宮廷楽士に来てもらい、毎日のように指導を受けている。無形世界遺産という勲章は、若い音楽家たちと老音楽家たちの、世代を超えた熱いチームワークの賜物なのだ。「彼らの指導を受けて、我々の音楽は初めて『本物の宮廷音楽』になったのだと実感しています。彼らから伝統技能を継承し、そして世界に広めていきたいと思っています。」
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