現在、宮廷音楽団には70人の音楽家・舞踊家がいる。中心となるのは、20代から30代の若者たちだ。その中にも、ルーさん一家のように、代々音楽家という家系の人が少なくない。Hoang Trong Cuong(ホアン・チョン・クオン)さんも、両親揃って音楽家という音楽一家に生まれ育った。
「本格的に伝統音楽の勉強を始めたのは、1989年、18歳でフエ芸術大学に入ったときからです。でも、子供の時から、生活の中には音楽が溢れていたので、私が音楽の道に進むのもとても自然な成り行きのように感じていました。」
クオンさんは生まれこそハノイだが、4歳の時にフエに移って来たので、「すっかりフエ人です」という。大学卒業後は、フエ省のフエ芸術団の一員として、国内各地を演奏旅行して回る生活をしていたが、1996年、現在の宮廷音楽団に加わった。
「何と言っても、この皇帝劇場の音楽団が、ベトナムで伝統音楽を学ぶ『本場』ですから。伝統音楽を極めたい、そのためにはここで演奏したいと思っていました。」実際に楽団員になって、ティーさんなど、本物の宮廷楽士から直接指導を受けるようになると、学校で習わなかった新しい知識や技術に出会った。演奏できるレパートリーも増えたという。
「元・宮廷楽士の人の演奏を聞いて、微妙なニュアンスの違いを聞き取ったりしなければならないので大変です。それら、宮廷音楽の真髄とも言うべきものは、どこにも書かれていません。耳と体で覚え、伝えられていくものなのです。」 |