そんなヴィンさんの息子達、ティーさんの孫達が音楽家になるのは、必定だったかもしれない。「私の場合と同じように、息子が14歳になると音楽の教育を始めました。上手くなって欲しいから、ちゃんと演奏できないときは、やっぱり定規でピシっとやったりしましたね。」
ヴィンさんには2男2女がいるが、息子は2人とも音楽家で、同じ宮廷音楽団で働いている。「音楽は我が家の家業なんですよ。幸い、息子達も音楽が好きで才能もある。ぜひベトナムの伝統を受け継いで行ってもらいたいと思っています。」伝統を継承してきた1人であるティーさんは、家族の枠を超えて今や国の宝。1年ぐらい前からは、定期的に宮廷音楽団に来て、自分の子・孫を含む若い世代を指導している。
「学校だけじゃ、足りない気がするんだよ。ワシらの場合は、家が教室で朝から晩まで音楽漬けだったからねえ。そうして初めて音楽が、自分の血の中、肉の中に染み込んでいくと思うんだよ。」ルー家では、ティーさんのひ孫も音楽に興味を持ち始めたという。こうしてまた次の世代へ、連綿と伝統は受け継がれていくのだ。 |