クメールの村をたずねて
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|多民族が共に暮らすチャウドックの街。モスリムであるチャム族のモスクが橋の向こうに見えた。水上マーケットでは、竿の先に売っているものを看板代わりに掲げた船が集う |
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|パーム椰子の花から採られたジュース(樹液)は、煮込まれたあと、約15分ほどかくはんされる。空気と混ざって白く濁った蜜はまさに水あめ状態。型に流し込んでも大丈夫なほどの粘りとなる。その後天日で乾燥。南国の強い陽射しの下、1時間もすればパームシュガーのできあがり。チャウドックのジュース売りの少女とカンボジアで出会ったパームシュガー売りのおばさん。照れくさそうに微笑む2人を、パーム椰子がつないだ |
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そして私が訪れたのはクメール人の村。明らかに肌の色がベトナム人より黒く、黄衣をまとった僧たちが歩くその光景は、カンボジアそのもののように感じる。100年前の内戦時にカンボジアから逃れてきた彼らは、ベトナム政府発行のIDカードも持っている。村の中に広い敷地を持つ寺が建てられていることからも、すでに彼らがここに根付いていることがわかる。クメールシルクやパーム椰子で砂糖を作ることで生計を立てているその数は約3000人だという。
この村の特徴的な風景を作っているパーム椰子の木は、クメール人が植えたものだ。その実は色が黒くこぶりで、サイゴンで見かけることはない。ジュースはココナッツのように実からではなく、花に傷を付け、そこから採取する。だから新鮮なジュースが味わえる範囲はせいぜいチャウドックの周辺くらい。竹筒に入れ街で売られたり、近くにある観光地のサム山の麓で飲むことができる。臭みもなく蜜に似た甘さが乾いた喉を潤してくれるが、この味の虜になったらチャウドックまでくるしかないようだ。
そして、それを煮詰めたものがパームシュガーで、茶色い固形状のもの。こちらは料理やお菓子用としてサイゴンのスーパーでも売られている。
当然、国境を越えたあちら側でもパーム椰子と私は再会した。が、その存在はさらにマイナーだった。シェムリアップの街では見つけられず、わざわざ産地の村を訪ねた。残念ながら雨期の今は米作りに忙しく、 パームシュガーは軒先で売られているだけ。 チャウドックであれほど見かけた実もほとんど見ることができなかった。乾期にジュースを売ったり砂糖を作っているそうだ。1リットルで200リエル(約6円)というから、コップ一杯で2000ドン(約15円)のベトナムと比べると、その商品価値の低さは悲しいほど。でもそれは生活水準の差からだけでなく、食へのこだわりが人一倍強いベトナムだからこそある違い、と私には思えた。 |