子育ては片手間に?
果たしてこの組み合わせは親子なのか、そうでないのか私は知らない。でも、ベトナムではそれは大きな問題ではないようだ。
日本で暮らしていた頃、子連れで電車に乗るのに子供がぐずったりしたらどうしようと気が気でなかった。周囲の目は冷たく、騒いで叱れば虐待。ほったらかしにしたら躾がなっていない。そんな風に思われるのではという強迫観念にいつもとらわれていた。
ところ変わってホーチミン市。移住してからしばしばレストランに子供を連れていく。しかし、店内を駆け回ったとしても、日本ほど気を遣うことはない。忙しそうなウエイトレスが5歳の我が子と遊んでくれさえもする。子供連れお断りのレストランなんて存在が認められてしまうお国から来ると、この国は育児天国にさえ思えてしまう。
折しもベトナムは戦後世代の結婚ブームとそれに続く出産ラッシュ。小さな子供にどう接したらいいのか分からないなんて事はここではない。大きなお腹を抱え仕事に励み、出産後はあっという間に職場復帰。で、育児はどうするのと思えば家族の誰かしらが面倒を見るか、人出が足りなければお手伝いさんを雇えば済んでしまう。なんともお気楽な育児と傍目には見えるのだが。
さて、真剣にビリヤードに打ち込む青年は、背中に赤ん坊がいることなど気にかける様子もない。やはりお父さんと言うより育児当番をしているだけといったところだろうか。負担に感じることなく当たり前に育児のお手伝いができてしまうこの国がちょっとうらやましい。
文・写真=福井隆也(ベトナム在住写真家の日々是撮影)
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(2005年2月22日 火曜日 10:23更新) |