ビーチで、四畳半の快適さを
四畳半の万年床。テレビのリモコンや、コードレス電話に雑誌などが雑然と転がっている。寝転がったままの私は、全てのものに手が届いてしまう。これを便利と呼ばず、なんと言おう。でも、他人からは何ともだらしなく横着な生活に見えることは間違えない。かつて私はそんな便利な四畳半のアパートに住んでいた。
ニャチャン郊外のヨックレットビーチでのこと。強い日差しを避けた木陰で、リクライニングチェアーに寝そべり、ぼーっとした時間を過ごす。のどが渇いたなあと思ったら、女の子がジュースを売りに来る。腹が減った頃にはおばちゃんがネムチュアを売りに来るし、エビやカニを茹でることだってしてくれる。そして、「マッサージはいかが?」という声もかかる。適度なもみ加減に気持ちよくなり、ウトウトしてしまう。そして、目が覚めたころにはまた何かを売りに誰かがやってくるというわけだ。
何とも怠惰な時間を支援してくれる昼下がりのビーチで、ふと昔のアパート暮らしを思い出したという次第。このビーチに限らずベトナムという国は本当に便利だ。自動販売機やコンビニがあふれかえっているわけではない。でも、そこかしこに屋台が立ち、道端がカフェになり、野菜や果物を家の前まで売りに来る。ゴザや塩を売りに来ることだってある。いわば街全体がコンビニみたいなもの。それもこれも商売熱心な働き者が多いおかげかな。などと、相変わらずのんびりビーチで過ごす私は考えるのであった。
文・写真=福井隆也(ベトナム在住写真家の日々是撮影)
ニャチャン郊外・ヨックレットにて
(2004年10月12日 11:25更新) |