早起きすれば・・・
メコン川の雄大な風景に触れられるカントーは好きな場所の一つ。二泊ほどの短い日程でやってきては、朝夕のおいしい時間だけをカメラにおさめてゆく。明日の日の出は午前6時。ホテルはぬかりなく撮影ポイントのすぐ近くにとってあるから5時30分に起きればいいはずだ。機材をそろえ、目覚ましをセットし、私は床につく。
実は朝のシャッターチャンスは二度ある。真っ暗な東の空が白みだし、薄いピンクに染まってゆく朝焼けが一回目。その時太陽はまだ地平線の下にある。あたりがすっかり明るくなってから、真っ赤な太陽が顔をのぞかせ二回目のシャッターチャンスが訪れるというわけ。
街灯の光を頼りにカメラバックと三脚を担ぎ、いそいそと撮影ポイントに向かう。その頃には屋台のおばちゃんは開店準備をし、健康志向なおじさんはウオーキングに励んでいる。つくづくベトナム人は早起きだなと感心するのもこんな時。眠くてかすみがちな目をこすりながら、三脚にカメラをセットする。朝焼けが水面に映りメコンを行く船がシルエットで浮かび上がる。私は眠気も吹っ飛び夢中でシャッターを切り続ける・・・はずだった。
ところが人並みに早起きが苦手な私は、二日続けて寝坊してしまった。言い訳にしかならないが、真っ暗な部屋で目覚ましが鳴っても説得力に欠けるのだ。慌てて川に向かい昇る太陽には何とか間に合った。何も知らなければきれいな朝日と見えるだろう。でも、私にとっては眠気に勝てなかった苦い思い出の一枚でもある。
文・写真=福井隆也(ベトナム在住写真家の日々是撮影)
カントーにて
(2004年7月5日 8:02更新) |