雨が降っても時間厳守
青い空と海に白い砂浜が自慢のはずのアナマンダラリゾート。が、時折強さを増す雨あしに、リゾート気分はどこへやら。手持ちぶさたな私は望遠レンズで、カッパを着て延々砂浜を歩いてきた女の子を追っていた。ホテルの桟橋にたどり着いたはものの、たちまち警備員につまみ出されてしまう。そんな一部始終をのんびり見物する私。
しかし、サイゴンではけっこう忙しい日々を送っている。仕事もあれば友達との約束だってある。そんなとき、突然の大雨に私は惑わされてしまう。“ベトナム時間”という時間の流れもあるらしい。でも小心者のわたしは雨が降ったくらいで遅れては申し訳ないと考える。で、土砂降りの中、傘をさしたり、贅沢にもタクシーを使ったりして、とにかく時間厳守をまっとうする。慣れた在住者は、多少遅れるのは当たり前。ゆくゆくはそんな時間の流れに自分も乗っていくのかなとも思う。ところでベトナム人同士はどうなの?と聞くと「1時間遅れでもOK。ケータイで連絡もしないよ。まあ、行かないときは連絡するかな」と、のんびりしたもの。でも、仕事だったらそうはいかないでしょ?「うん、会議があったら15分遅れが限度だな。外資で働く友人は、時間厳守らしいよ」とのこと。さすがのベトナム人も外人相手には常識を曲げねばならぬようだ。どうやらわたしの大好きな“ベトナムらしさ”にも“世界の常識”が忍び寄ってるらしい。
そんなことがチラリと脳裏をかすめたが、ここはリゾート。“ベトナム時間”に合わせゆっくりりと雨が上がるのを待とうと思う。
文・写真=福井隆也(ベトナム在住写真家の日々是撮影)
撮影地(Nha Trang)
(ベトナムスケッチ2003年8月号) |