年季の入った足の裏
いつでもTシャツとサンダルでいられる身軽さ。それも暑い東南アジアの魅力の一つと思う。ベトナムでの私はいつもそんな格好。しかし、撮影のためにあちこち歩き回る私は、つい最近までどんなに暑くてもスニーカーで通してきた。そんなとき、いつもサンダルで歩いてるベトナム人が実に身軽に見え、うらやましく思っていた。でも、いまでは私もサンダル。常に重いカメラを担いでいるのでそれほど身軽とはいえないが、暑苦しい靴を脱ぎ捨てた開放感に浸っている。
しかし、さらに上手は裸足でペタペタ歩いている人たち。田舎町の川っぺりでお茶をする私の前に、小舟を器用に操るおばちゃんたちがたむろしているのだが、みんな裸足だ。船の中にサンダルはあるようだが、ちょっと陸に上がるくらいなら履くこともない。そんなおばちゃんたちの足、小石を踏んだくらいでは痛くもないだろうほどごつごつしている。サンダルを履くようになった私も少しは足の裏がたくましくなったはずだが、おばちゃんたちにはとうていかなわない。
裸足で歩くたくましさに惹かれたわけではないが、三歳になったばかりの息子を遊ばせているといつの間にか裸足で外を走り回ってる。すると近所のベトナム人が「危ないよ、裸足で遊ばせるのは」と親切にも注意してくれる。田舎町とホーチミンの違いか、裸足で駆け回る子供というのはこの街で見かけることは少ない。裸足で歩くことを「ベトナム人の強さ」とも感じていたが、それはちょっと違うわけだ。そんないろんな思い違いに気づき始めた移住半年目である。 文・写真=福井隆也(ベトナム在住写真家の日々是撮影)
(ベトナムスケッチ2003年7月号) |