<ベトナム芸能界珍道中>
愉快・痛快・ウキウキ★SAKAI
第7話:ついに破門!帰国。そしてWADAまでも…。
☆前回までのあらすじ☆
ようやく歌のレッスンを認められたSAKAIだったが、あまりの音痴ぶりに即、頓挫。師匠ゴック・ソン(Ngoc Son)の巡業では再びダンサーとして同行するが、ゲイ能界の波にも揉まれる羽目となり、不満は募っていく一方だった。
俺は相変わらずのダンサー扱いに困惑しイライラしていた。まるで師匠ゴック・ソンの奴隷のような日々。食事は旨くもないモサモサ鶏皮に、大嫌いな泥臭い魚料理の連続だ。
さらに深夜の脱走が師匠にバレたことで、師匠の部屋の隅にSAKAI専用ベッドが置かれ、俺は常に師匠の管理化に置かれた。これではまるで軟禁生活。精神的にも参っていた。
そんなある日、師匠のカバン持ちをしていた俺は、コンサート中に預かっていた携帯電話を、つい片手で師匠に渡してしまった。
目上の人に物を渡す時は、両手を添えて差し出すのがベトナムの常識。
それを知りつつも、師匠に対して抱いていた反発心が、行動に出てしまったのだ。
案の定、師匠に物凄い剣幕で怒鳴られた。楽屋には他の歌手も一緒にいたせいか、まるで自分の権力を周りに見せつけるかのように、いつも以上に激しく怒号が飛ぶ。俺はイライラが頂点に達した。
「うるせぇ! そのくらいで、いちいち怒るんじゃねぇ!」
師匠に対する、初めての口ごたえだった。楽屋は騒然となり、師匠も鼻息を荒げて日本人プロデューサーに電話をかけた。
「SAKAI、デシ、ナイ。トテモバカ。トテモバカ。」
師匠の、
「ばか! 馬鹿! BAKA! バカ!!」の連続に、
「それはオメエだ」
と心の中で必死に叫んでいたものの、俺は何も出来ないまま、日本人プロデューサーの事務所へ連れていかれた。
次のページ→
(2007年9月号 | 2007年9月21日 金曜日 10:35 JST更新) |