<ベトナム芸能界珍道中>
愉快・痛快・ウキウキ★SAKAI
第5話:焦り、監禁、脱走…。破門の危機?!
何だか家の中が騒がしい。メイドや運転手が俺を探しているようだ。やばい、ばれたかとこっそり中に入ると、師匠が怒りの形相で腕を組み仁王立ちしていた。
「SAKAI、キミ、ドコ、ナゼ、トテモアタマワルイ!」
師匠の怒号が家の中に響く。師匠はおもむろに自分の部屋にあるテレビをつけた。そこに、鉄格子を昇る俺の姿が映し出された。
師匠邸はセキュリティ対策が万全で、監視カメラが何台も設置されていた。それに気づかなかった俺は、見事に脱走の瞬間を撮影されてしまっていた。
「キミ、ボクノコト、キライデス」
師匠がさらに俺を追い詰める。
「SAKAI、デシ、チガウ。ニホンカエル」
師匠がついに絶縁状を俺に叩きつけてきた。俺のスターへの階段もココで閉ざされてしまうのだろうか?
街頭で見たWADAのポスター。俺は彼のようにスターへの階段を登るチャンスすら許されないというのだろうか?
翌日、どこまでも機嫌の悪い師匠と共に、俺はコンサート会場をまわっていた。今日はダンサーとしてすらステージに立たせてもらえない。
痛めた足には大量のサロンパス。沈黙が続く車内。気まずい。
そんな中、助手席に座っていた師匠が急に身を乗り出し、俺に話しかけてきた。
「SAKAI、ウタエマスカ?」
てっきり破門されるのだろうと思っていた俺は、予期せぬ問いかけに驚いたが、すかさず、「歌えます!!」と答えた。
すると師匠が、
「CD、SAKAI、ウタウ、ワカッタ〜?ハアン?」
CD? 歌う?? 何だかよく分からないが、ひとまず破門されないですむみたいだ。
その日のコンサート巡りが終わり、師匠邸に帰るとグランドピアノの前に呼びだされた。
「SAKAI、シンガー、ワカッタ、キミ、ガンバル」
こんな状況で急に歌えと言われて、やや戸惑ったが、やっと歌手としての1歩を踏み出すことが出来そうだ。WADAには遅れを取ってしまったが、師匠も俺の魅力を分かってくれたようだし。
何かもやもやしていた気持ちが、俺の中で確信めいたものに変わっていた。
文★SAKAI
協力★kickey
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(2007年5月号/2007年5月25日 金曜日 10:37 JST更新) |