ベトナムの今がよくわかる /ベトナムニュース解説10月号

ホーチミン市に「マスクATM」登場、「コメATM」発案者が運営

ホーチミン市タンフー(Tan Phu)区に「マスクATM」が登場した。運営するのは、以前「コメATM」で話題を呼んだ青年実業家ホアン・トゥアン・アン(Hoang Tuan Anh)さんだ。機械の前に立つと顔が認証されマスクが受け取れる仕組みで、機械の裏には、故障時に備えてスタッフが待機。アンさんはマスク9000枚を用意。このような活動が社会に広がることを期待している。 (Tuoi Tre 8月7日,P.3)
解説 日本でも報道されたため、ご存知の方も多いと思います。コロナ禍におけるアンさんの「コメATM」による米の無料配布は多くの人に感銘を与え、共感した人々の協力で全国に広がりました。当初は1日500kg程度の配布を想定していたようですが、幅広い支援を得て全国に100台ほど設置され、1日50~500tの配布になったとのことです。   今回、マスクに切り替えた理由については、社会隔離がとられた際に貧困者を中心に職を突然失った人が多かったため、まずは食を確保したかった、今の時点では仕事には行けるがマスクを買うことがまだ難しい人もいる、と説明。今後もその時々の状況に合ったものを提供していくそうです。   考案者の願いが叶って、マスクATMもその後、ハノイ、ハイズオン(Hai Duong)、ブンタウ(Vung Tau)など各地に設置されています。以前にも本コラムで、新型コロナで行き場を失った果実の救済活動に触れましたが、非常時におけるベトナム社会の対応力と実行力に改めて感心させられる話題でした。

データ通信の利益が低下、苦戦する通信キャリア

携帯電話4Gが普及し、利用者が急増しているにもかかわらず、通信業界の売上は伸び悩んでいる。ベトナムのデータ通信料は破格で、ビナフォン(VinaPhone)が提供するパッケージ「VD89」なら月額8万9000VND(約450円)で120GB利用できる。ベトテル(Vittel)やモビフォン(MobiFone)の料金設定も大差なく、ベトナムは世界で最もインターネット利用料が安い国の1つとなっている。 (Dau Tu 7月24日,P.8)
解説 記事によると、2020年6月時点で通信各社の3G、4G利用者総数は6533万件に達し、前年同期比で800万件増加していますが、売上は11%落ちているそうです。   通信各社の売上構造では、通話とショートメッセージが70%を占め、残りがデータ通信です。通話とメッセージの利用は減少傾向にあり、通話による売上は年16%落ちているそうです。通信各社は、通話の売上減をデータ通信料で埋めようと考え、顧客獲得を目指し料金を下げているわけですが、これが逆効果になり各社のインフラや技術への再投資にも影響しているようです。   ちなみにベトナムに定住している筆者は、日本への帰国も稀であるため日本の携帯電話を持っていません。一時帰国する度に、空港のツーリストSIMの取り扱い窓口に行っては利用期間と料金をにらめっこするも、結局は「今回は(も?)使わなくていいや」と判断することがほとんど。ベトナムのように企業体力に影響しかねない水準まで下げる必要は無いと思いますが、日本はもう少し消費者にやさしい料金になれば…と、切に思います。