ベトナム人実習生を我が子同様に育て教育、そして日本へ

2019年10月に本誌で実施した「読者アンケート」で、「ベトナムスケッチ特別インタビュー記事」に当選した伊藤均さん。現在は、ベトナム人実習生を日本へ送り出す機関「ミン・タム(Minh Tam)国際株式会社」で教育センター長を務めている。来越のきっかけや現在の仕事、実習生への思いなどについて伺った。

――― 来越のきっかけは何ですか?

2005年、日本の建材メーカー「文化ベトナム/Bunka Vietnam」の責任者としてホーチミン市に赴任しました。その会社には約40年勤め、2010年に定年退職して一度日本に帰国したのですが、ベトナム生活が好きだったので戻ってきました。過去に人材教育なども担当し、人を育てる楽しさとやりがいを感じていたことがあり、縁もあって日本へ行くベトナム人実習生に言語や文化を教える仕事に就くことになりました。

――― ベトナム人実習生の送り出しの現状について教えてください。

2010年当時、ベトナムから日本へ送り出す実習生は年間5000人ほどでしたが、年々増加しており、2020年は5万人を超える見込みです。現在の日本の産業は、ベトナム人実習生が支えてくれているといっても過言ではありません。彼らがいなければ、製造業や飲食業、ホテルなど、経営は成り立たないと思います。2019年4月には新しい在留資格「特定技能」も施行されたので、今後もますます増えることが予想されます。

――― 日常の業務を教えてください。

会社の業務は、日本の管理組合を通じて企業からの採用依頼を受け、人材の募集から始まります。所定の条件を満たした人材は一旦教育センターに集めて、日本語の簡単な挨拶や自己紹介などを練習して面接に備えます。採用が決定すると候補者たちはいつも溢れる笑顔を見せてくれます。その後に事前研修が始まり、言葉だけでなくごみの出し方、近所の人たちとの交流などについても指導します。 そして出発日、私は毎回空港まで見送りにいきます。空港には実習生の家族や親戚、友人、恋人などが集まって壮大に見送られます。日本での3年間を無事過ごせるよう責任を感じるとともに、元気で帰国することを願うばかりです。 2020年のバレンタインデーは、女性の実習生にチョコレート菓子をプレゼントした。日ごろは厳しく指導するも、イベント時は優しい“日本のお父さん”として接する 座学ばかりでは実習生たちは飽きてしまうため、ストレスの発散と運動も兼ねて、時々野外でも会話の練習を行う。写真はタイ(Tay)湖沿いにある公園

――― 今後の目標を教えてください。

今の実習生は2000年代生まれの子が多いです。私の子どもよりも若く、孫世代といってもいいくらいです。約半年ほど寝食を共にし、日本に馴染めるよう挨拶1つから厳しく指導にあたるので、彼らのことを本当の自分の子どものように感じています。実際に日本へ向かうときは涙腺が緩んでしまいますね(笑)。この仕事は今の私の生きがいです。これからもできる限り実習生の送り出し事業に関わっていきたいです。
伊藤均 いとうひとし 1952年生まれ。静岡県掛川市出身。2005年に来越。定年退職後の2010年より、ベトナム人実習生を日本へ派遣する教育事業に携わる。現在はハノイに在住。これまでに複数の機関でコンサルタントや実習生への教育を担い、これまでに送り出した実習生は2000人ほどになる。
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