29屋的　越南食卓 ／第28回

インドシナの片隅で カレー愛を叫ぶケモノ

インドシナ。ベトナムが位置している、この半島地域では、インド成分と中国成分の混じり具合が、民族や地域ごとで実にバラエティ豊か。料理においても、実に楽しい食生活が送れるので、我々ベトナム在住者は得をしている気分になってしまうものだ。 今月の本誌特集インドカレー。汁の濃淡・辛さの強弱・付け合わせ・スパイス種類の多寡・メイン食材の多様性など、バリエーションが幾千でも広げられる、可能性と夢の結晶ともいえる。ここホーチミン市には、本格的なインド料理レストランがそこら中にあり、3度の飯よりカレーが大好きな私にとって、越南印度化計画が顕在化した遥かなるユートピア、ガンダーラと位置付けても過言ではない。スパイス効果によるナチュラルハイなドーパミントリップこそ、合法かつ健康的な越南食卓的快楽主義が目指すべき究極の高みの１つではないかと、人にも勧めまくりたい今日この頃である。 ところで、美味いインドカレーがあり、食べ慣れた日本カレーも、タイやマレーシアの一風変わったカレーも楽しめる街なのに、ご当地名物であるべきベトナム風カレーの風評が、いまひとつ芳しくないのはどういうわけか？　ぶっちゃけ、パンチ不足が原因だと思う。鶏肉とサツマイモ、香りづけ程度のココナツミルクと生姜、レモングラス、ちょっぴりのターメリックと、申し訳程度の唐辛子。「インドに謝れ！」と言いたくなるくらいの、中途半端っぷりに思えるのは私だけ？　独断と偏見、スマン。だが、ガッツ！！！

【今月の言葉】食材＆弁当屋の店主。本業の傍ら、かつては「愛と勇気とほんの少しのお金」など本誌人気コラムを担当。本コーナーでは、ベトナム事情を踏まえて食卓にまつわる小ネタに切り込みます！