ベトナムの日本人/月嶋カリンさん/歌手

相棒のピアニストと出会い、自分の「音楽」が変わった 歌に愛される歌手になり、心に寄り添える音楽を届けたい

[caption id="attachment_82499" align="alignnone" width="570"]nihonjin 衝撃的な日々の始まり もっと歌えると思っていた ホテルで歌い始めて最初の3ヶ月は、毎日が試練の日々で、涙する日も多かったという。 「彼にダメ出しをされるんです。『その歌い方はクールじゃないから2度としないで』とか。辛かったし、自分は“歌える”と勘違いしていたのだと気づかされました。積み上げてきた音楽への自負みたいなものが崩れましたね」 1999年に『モーメンツ/Moments』でメジャーデビューし、日本でプロ歌手として活動していた月嶋カリンさん。「外国で音楽活動がしたい」とニューヨークを皮切りに、ヨーロッパを渡り歩き、初めてベトナムを訪れたのは2009年のこと。「当時ゲストとして歌ったイベントで、バックバンドをしていたジェイソン・ジャズ(Jazon Jazz)に出会ったんです」 その後6年の月日を経て、ジェイソンさんから「一緒にカラベルで演奏しないか」と声をかけられた。ジャンルは初めての挑戦となる、ジャズ。2017年1月、2人でステージに立ち始めた時から、冒頭のような「説教部屋」のやりとりが、連日繰り返された。 「この半年間よくやってこれたなと思うぐらい、大変だった。ただ、彼の“説教”は必ず自分を成長させてくれるとわかっていました」 ジェイソンさんの故郷は、街中に音楽があふれる国フィリピン。子どもの頃から生きるために音楽を生業としていたという。 「音楽への考え方が全然違うの。 “好き”や“得意”とかじゃない理由で音楽をしてきていて、圧倒的な凄さがあるんですよね」 お客さんに対する観察眼の鋭さも尊敬していることの1つだ。 「ホテルでは自分たちの演奏のために訪れる人は少数で、様々な理由でラウンジに集まる“ホテルのお客様”なんです。彼は、誰の邪魔をすることもなく、どんな人にも寄り添う音楽を届けられる。選曲のセンス、演奏の仕方、まだまだ学ぶことはいっぱいだな」 自己表現としての音楽ではなく、 歌そのものと恋に落ちていたい そんな刺激を受けながら歌う現在の目標は「歌に愛される歌手になる」ことだ。 「一生懸命『この曲を聞いてー!』ってアピールするんじゃなくて、今は歌と恋に落ちて、寄り添って、愛されたいな」と目を輝かせる。 「どうしてもうまくいかない時は別の角度からアプローチします。自分の愛し方が間違っているのかな? とキーを変えたり、歌い方をちょっと工夫してみるんです」 その成果が出てきたからか、最近はベトナムの若いミュージシャンたちが、彼女たちのパフォーマンスを見に来て声をかけてくれる。 「いつかベトナム人アーティストとフィーチャリングしてみたいなと思います」 最近は「説教部屋」の回数もだんだんと減ってきた。 「実は少し物足りなかったりもして(笑)。彼がいつも『Jazz is cool.』って言うんです。気持ちの高ぶりを表現するのがラヴソングだとしたら、そっと手を差し伸べるのがジャズだって。そういう勉強を今、カラベルでしています」
プロフィール 月嶋カリン 宮城県石巻市出身。1999年に日本でメジャーデビュー。2009年に初来越後、東南アジアを旅し、2017年1月より、5つ星ホテル「カラベルサイゴン/Caravelle Saigon」内の「カフェ・デ・オペラ/Café de l’Opera」で歌うなど、ホーチミン市を中心に音楽活動を行っている。
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