ベトナムの日本人/藪下成仁さん/バリア・ヴンタウ省人民委員会/ジャパンデスク事務局

ベトナム政府側に立ち、日本との架け橋に。 ヴンタウで培った経験をさらなる飛躍へと繋げたい

[caption id="attachment_82499" align="alignnone" width="570"]yabu3_pic ベトナム南部有数の観光地バリア・ヴンタウ省に、ベトナム政府機関で働く日本人がいる。弱冠26歳の薮下成仁さんだ。2014年7月に省政府予算で設置された「ジャパンデスク事務局」に所属。外国人公務員として、日本からの投資誘致のための調査や提案、進出企業のサポートなど多岐に渡る業務を政府窓口として行っている。 同省は、日本政府の直接投資先、日本企業の進出先として注目を浴びる、いわば“国家戦略の都”。国内最大のカイメップ・チーバイ港を有するほか、原油や天然ガス、山水などの豊富な天然資源に加え、この地に古くから根付く産業を基盤に発展した人的資源が何よりの強みだ。 大学在学中は、学業のかたわら友人とともに「学び方を教えるオンライン学習塾」を立ち上げるなど充実した4年間ではあったが、ある時「大きな夢を持ち、この日のために生きてきてよかったと思えるほどの達成感を味わいたい」と強く思うように。卒業後は就職せず、夢の1つである建築士を目指して勉強に励んでいたが、偶然ヴンタウの大学で日本語教員を募集していることを知り、不思議な縁を感じて応募。半年の予定で赴任し、サークル発足や文化祭の開催など、教え子の学生生活の充実に力を注いだ。そこで培った人脈がきっかけとなり、ジャパンデスクでの勤務に至ったのだ。   当時、右も左も分からなかった薮下さんを支えてくれたのは、直属の上司にあたる風間賢雄さんの存在だと話す。 「多くを語らずとも、背中ですべてを示してくれる方。未熟だった私を、どこで働いても恥ずかしくないよう育てていただきました」。 ジャパンデスクでの勤務は今年で3年目を迎える。ベトナムの政府機関に身を置く面白さとは何だろうか。 「ベトナムがどのように国を発展させていこうとしているのかをダイレクトに感じられること。また、日本とベトナム両国の政策に直結する重要な現場に立ち会えることに大きなやりがいを感じています」。 政府と政府、政府と企業間の架け橋として、企業の思いを背負って政府と向き合う役割を担う中で、「自身の経験だけでは立ち向かえない」と思う瞬間もある。そんなとき心の支えとなるのは、バックグラウンドが異なる塾生一人一人に適した勉強法を日々考え抜いた大学時代の経験だ。 「誰かのために尽くす喜びを知れたことは、今に繋がる大切な起点となりました」。 現在、同省の「フーミー3特別工業団地」の完全稼動に向け奮闘の日々を送っている。綿密なすり合わせを経て入居企業を選定し、心地よく過ごせる空間をともに創り上げていく一連の作業を「まさに思い描いていた建築士の仕事」と表現し、「夢が叶っちゃいましたね!」と無邪気な笑顔を見せる。 「夢は大きく、いくつも持ってなんぼ」。最近では、国際公務員になるという新たな将来の夢も生まれた。 「複数の国同士を強く結びつけられるよう、架け橋としての経験と度胸をこの地でさらに培っていきたいです」。
藪下成仁 やぶしたなるひと 鹿児島県出身。大学卒業後、無職・フリーターを経て渡越し、バリア・ヴンタウ大学東洋学部に就職。2014年7月、バリア・ヴンタウ省人民委員会計画投資局に入庁。投資誘致事業のワンストップサービス確立とともに、日本企業のベトナム進出支援に奉仕している
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