ベトナムの日本人/増田 悠さん/「ぺぺラプール」オーナー兼シェフ

子どもたちの可能性を広げるために店を持った 人生を大きく変えたボランティアでの出会い

[caption id="attachment_82499" align="alignnone" width="570"]IMG_0219 OLYMPUS DIGITAL CAMERA[/caption] タイ(Tay)湖を望むレストラン「ぺぺラプール」を経営する増田悠さんが初めて来越したのは2010年7月。それまで料理人をしていたが、国内外で活躍していた憧れの兄が29歳で他界し、その兄と同じ歳になったときに人生を変える決断をした。 「仕事にも仲間にも恵まれていたけれど、何か納得いかないんです。兄貴はずっとかっこいい生き方をしていたのに、何で俺はそれをしていないんだろうと」。 このままではまずい、とりあえず1年くらい国外へ出ようと海外ボランティアを探し、唯一、英会話が条件になかったハノイへ向かった。「僕は英語がまったくできなかったし、料理人募集とあったんで完璧だなと。やるとなったら100%でやってやる、っていうものすごい覚悟があって。あの時の気合が半端じゃなかったのはすごく覚えているんです」。 派遣先はロンビエン(Long Bien)橋周辺の川の上や橋のたもとで暮らす、貧しさや無戸籍などの理由から学校に通えない子どもたちのための施設。そこで給食作りや寝かしつけをして、子どもたちと仲良くなった。 「初めて家に行った時は、すげえな、ここで暮らすのかと思いました。ただ想像と違ったのは、貧困を感じさせない雰囲気。こんなに明るいものなのかと」。 そんな彼らに「ぞっこん」になり夢中で活動に取り組んだが、ある時転機が訪れた。 「施設がなくなるって言われたんです。出生証明書がある子だけが引き受け先の学校に入れると聞いて、じゃあ持ってないほとんどの子はどうするんだと」。 ボランティア団体と揉め、仲間でフランス人のぺぺさんと脱退した。 「僕がまずしたのは出生証明書を取ること。彼らの親をバイクの後ろに乗せて、生まれた町の役所を廻ったんです」。 子どもたちが学校に行けたらという一心で再取得を果たし、1年の滞在期限を迎えた。「帰国する前に、子どもたちに『レストランを作る』って約束したんです」。 彼らのチャンスを少しでも広げるために、唯一自分にできることは店を開くことだった。 帰国後、ホーチミン市で店を始めるからと声がかかり、ハノイでの開業を目処に立ち上げから2年間だけの約束で手伝うこととなった。その後ハノイに戻り、仲間たちの協力のもと「ぺぺラプール」を開業し、施設にいた子どもたち6人を雇った。これまで採用したのは15人ほどで、中には店で働いたことで元々行けなかった職業訓練校に行けるようになった子もいる。今は2人のみだが、「働きたいと言ってくればいつでも無条件で受け入れますよ」というスタンスで、あえて誘ったりはしないそう。 「ボランティアはされている側よりも、している側の方が大きく変わることを、自分も含めたくさん見てきました。今、僕はハッピー。満足しちゃっているのがちょっと恐いかな」と言う一方で、ベトナム人スタッフを店長に据えた新店舗の開業も視野に入れている。 「僕ね、ラッキーなんです。いろんな人に助けてもらって、いい場所で店ができて。兄貴のパワーだと思ってます、本当に」と言い、今なら兄にも胸を張れると笑った。 
増田悠 ますだゆう 東京都出身。2010年7月に初来越し、1年間のボランティア活動ののち帰国。2012年に再来越し、ホーチミン市のレストランの立ち上げとシェフを務める。2014年にハノイでレストラン「ぺぺラプール/PePe la poule」を開業。
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