ベトナムの日本人/小林由紀夫さん/佐瀬新さん/野菜宅配サービス「しゅん」運営

豊かな食生活とは、「自分の食べているものがたどれる」こと。 畑と食卓、生産者と消費者の想いをつなげることが使命です

Japanese_Food_201606_001 残留農薬や食の安全に危機感を募らせるベトナムの消費者。その受け皿の1つになっているのが、2012年に設立され、ハノイを中心に産地直送の野菜を宅配する「しゅん」だ。 「どんな場所で、どんな人が、どんな思いで作っているのかを知って、その食材を食べることこそ真のグルメ」という想いで、2年前より「しゅん」に関わっているGMの小林由紀夫さんと品質管理責任者の佐瀬新さん。ふたりに案内されたハノイ近郊の集荷センターでは、提携農家から入荷した野菜の出荷作業が行われていた。青々としたブロッコリーのいらない葉を取り、ジャガイモの土を払って袋詰めしているベトナム人スタッフに気さくに声をかけながら、色の濃いおいしそうなトマトを1つつかむ小林さん。 「トマトのヘタがしなびていて、古いのではと聞かれることがあります。そういう時は、トマトは出荷直前まで水を与えないことで甘くなる、とお知らせするんです」。 生産者の想いを知ることでもっとおいしくなる、消費者の声を知ることでもっと大切に育てるというように、豊かな食生活を生み出すことが「しゅん」の役割だと自負する。宅配ボックスに野菜と同封するチラシに、農家のベトナム人の名前と顔を出すことはその一環だ。時には、運送業者に任せずに自ら顧客に配達し、宅配野菜の味や品目のバランスなど、率直な感想を尋ねる。 ベトナムならではの密な関係と、真摯で熱いふたりの姿勢が信頼を生み、「宅配されたキャベツに一部変色がある」と指摘があれば、その日配送された全ての顧客にメール連絡をするなど、迅速なフォローとカスタマーサービスの向上につながっている。 それでも設立以来続く課題が、この品質管理だ。暑い時期は野菜が傷みやすく、品種によってはあえて前日に収穫し冷蔵してから出荷するといった工夫を重ねている。 「質の悪いものは遠慮なくはじくようにしていて、それによって提携農家の意識も変わってきています。それでも、いいものを作るという意識は、日本に比べると、まだまだです」と佐瀬さん。化学肥料がベトナムで使われてから年数が経ち、土が痩せるなどの被害が出てきた近年、安全性を意識する農家も増えてきている。 ダラットにある「しゅん」の提携農家でも、コーヒーを原料にした堆肥を畑に使い、農薬を減らし、良質の野菜を作れるようになったという。 今後は、有機農業の認証制度や、流通網の整備がベトナム農業の課題だ。さらに、国の価格保証制度がなく、米農家などは生活が成り立たないという深刻な問題もある、と小林さんは語る。 「いいものを作れば適正価格で買ってもらえる。それが農家の意識と所得の向上につながると思っています。消費者の皆さんに産地に行っていただく活動を通して、交流をもっと進めていきたいです」。   ふたりのベトナムでの小さな農業改革は始まったばかりだ。
小林由紀夫 こばやしゆきお 1963年、千葉県生まれ。高校の教員をやめ、千葉県の産直組織の職員に。学校給食や宅配野菜の担当を経て、2014年5月に来越。 佐瀬新 させあらた 1989年、千葉県生まれ。農大卒業後、千葉県の産直組織で野菜の生産や販売を担当。2014年5月に来越。 ウェブサイト:www.syun-vn.com
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