ベトナムパペット劇場/恋する人への思いを運べ/モン族の「ケーン踊り」 Vol.14

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あの人、まだ来ないかな?

山岳民族の暮らしを描いた演目「ケーン踊り/Mua Khen」は、恋人探しの場である「ラヴマーケット」を彷彿とさせる。まず最初にモン(H’mong)族の男性が現れ、伝統楽器の「ケーン」を奏でつつ歌い始める。 「鳥は巣を持ち、シカは2頭のつがいで遊ぶ。僕はケーンの音で心を送り、君を呼ぶ。どうして君はまだ来ない?」 すると、カラフルな民族衣装をまとった5人の女性が登場。晴れ着のスカートと鮮やかな色の傘を見せようと、くるくる回りながら「森の花の香り」や「渓流の中で泳いでいる魚」を優しい旋律で歌い、春の訪れと恋人を待つ幸福感でうれしそうだ。 そこへ先の男性がもう1度現れ、女性1人と中央で合流。男性はケーンを持ちながら激しい動きで男らしさを強調し、女性も応えようと傘を何度も回す。気が付けば水面にはふたりのみ。後は甘い恋人たちの時間だ。明るい音楽とともに幕の後ろへと下がっていく。

ラヴマーケットに欠かせない楽器

この演目で表現されるラヴマーケットは、物を売り買いする市場ではなく、若者が恋人を探したり、好きな人に告白する場。また昔の恋人同士が当時を懐かしむための逢瀬の場でもある。当日は、晴れ着を来た人々が伝統的な歌や踊り、ゲームなどを楽しむ。そこに森の竹でつくられた吹奏楽器のケーンは必ず登場。男性が恋人に思いを伝える時に、やや哀愁の漂う音色が心強い味方となってくれる。 通常年に1回、春か秋に行われるラヴマーケットは、サパ(Sa Pa)では毎週末、観光客向けに開催されている
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